名古屋市に本社を置くシェルパは、リーマンショックで自動車メーカーなどからの施工図作成の仕事が激減したの機に、思い切ってBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)に注力。現在は社員全員がBIMソフトの講師資格を持ち、BIMを売り物とする会社に変身した。
1999年に設立されたシェルパは、名古屋の本社と東京オフィスを拠点とし、合計25人の社員がいる。顧客は大手設計事務所や建設会社、建物オーナーが中心で、各社のBIMやファシリティー・マネジメント(FM)関連業務をサポートするのが主な仕事だ。
「仕事は設計から施工、維持管理まで、建設ライフサイクルのすべてにわたる。技術的に難しい業務もあるが、様々な知識やスキルを持つ社員がチーム一丸となって解決していく」と同社代表取締役の高松稔一氏は語る。
毎月第3金曜日の夜、東京・箱崎の東京オフィスでは「OPEN BIM café」と呼ばれるBIMをテーマとした人気セミナーが開催される。
普段、仕事で使っているパソコンやモニターはオフィスの一角に片付けられ、社員の机はセミナー参加者用の席として並べ替える。そしてスクリーンとプロジェクターが用意され、オフィスはセミナー会場に大変身する。
BIMユーザーとの交流を楽しむホスト役の社員
講師を務めるのは、公的研究機関や建築設計事務所、建設会社、ソフト・ハードメーカーなどでBIMにかかわる実務者だ。毎回、2人講師が45分ずつのBIMについてのホットな話題を「ココだけの話」を交えながら提供する。
1つ目の講演が終わった後、参加者には缶ビールやワイン、お茶などが配られるのが、このセミナーの人気の秘密だ。その場でのどを潤しながら、リラックスした雰囲気の中で2つ目の講演を聴く。
その後は、テーブルを立食パーティー形式に並べ替え、参加者自身がBIM展開の苦労話などを自由話し合う「パワーディスカッション」が始まり、夜10時の終了時間まで談笑が続く。
OPEN BIM café を運営しているのは、シェルパの社員だ。参加費の集金や領収書の発行から、休憩時間のドリンク配りをてきぱきとこなすほか、パワーディスカッションの間には料理やスナックを補給したり、ドリンクのおかわりを持って行ったりと、ホスト役を務めるのだ。
ある社員は「毎月開催するのは大変な点もあるが、社員自身もBIMの最先端で活躍されている方々の話を聞けることに大変感謝している。ふだんとは違うリラックスした雰囲気で、業種を超えてBIMを語り合えることはとても有意義だ。一番苦労しているのは、講演者を探すこと」と語る。
しかし、どの社員もBIMユーザーである参加者とのコミュニケーションを楽しんでいるように見える。社内でのBIM展開に悩むなど、課題を抱えた参加者たちもシェルパの社員がBIMユーザーの交流の場を毎月、設けてくれることに感謝している。
2011年5月にスタートしたOPEN BIM caféは今年5月17日の開催で25回目を迎え、すっかりBIMユーザーの間に定着した。延べ参加者数は約600人、講演者は延べ44人にもなる。
参加費はわずか1000円。毎月1日に募集が開始されるが、20人の定員は数日間、早ければ数時間で満員になるほどの人気だ。