ポイント5:国際動向との調和――国際的な「土木」と「建築」の区分けを意識

 米国やノルウェー、シンガポールなどでは、建築分野を中心としてBIMによる電子納品が義務化されている国がある。

 また、報告書では日本の「土木」と「建築」の区分けは、欧米の「Civil Engineering」と「Architecture」とは異なると指摘している。。例えば構造や環境などは、日本では土木と建築の分野で重複して存在しているが、欧米では建築の構造や環境も「Civil Engineering」の区分けに入っているという。

日本の「土木工学と建築額」の区分けと欧米の「Civil EngineeringとArchitecture」の区分けの違い(資料:大阪大学大学院教授 矢吹信喜氏)
日本の「土木工学と建築額」の区分けと欧米の「Civil EngineeringとArchitecture」の区分けの違い(資料:大阪大学大学院教授 矢吹信喜氏)

 確かにBIM、CIMの技術面を考えた場合、同じ鉄筋コンクリートや鉄骨などの部材を、橋梁、ビルなど使われている構造物によって使い分けるのはナンセンスかつ非効率である。

 また、国交省が推進したCALS/ECでは、CADデータの受け渡しに「SFX形式」という日本独自の規格が採用されたものの、電子納品以外にはあまり使われているとは言いがたい。一方、海外のBIMによる電子納品では「IFC形式」と呼ばれるBIMの標準フォーマットが一般的に使われており、こちらは日本の建築業界のBIMモデルデータを交換する際によく活用されている。

 報告書では「STEP」や「IFC」、「GML」、「LandXML」などの国際規格についても詳しく紹介している。CIMも日本独自の規格にこだわっていると、 “ガラパゴス化”に陥ってしまう恐れがある。また、CIMを使って海外プロジェクトに参入する際も、国際規格との連携をとっておいた方が有効だろう。報告書では海外で使われているデータ形式をよく研究し、有効活用しながらCIMを進めていこうという意思が感じられた。