ポイント3:実用性重視――効果の高いCIM活用を追求

 BIMやCIMの説明としてよく使われるのが、1つのモデルデータを基本設計から詳細設計、見積もり、施工、維持管理に使い回すことで業務効率や生産性を上げるという図だ。

 大筋では間違ってはいないが、逆にこの図にとらわれすぎて、何でもBIMやCIMのモデルを使って設計業務を行わなければいけないという思考に陥ってしまいがちだ。建築分野でのBIM活用でも「どこまでモデルを作り込んだらいいのか分からない」とか「特殊な構造や形の屋根をどうモデル化するか」といったことに時間をかけすぎて、かえって効率や生産性を落としている例がよく聞かれる。

 報告書では、2012年度、国交省が行った11件のCIM試行プロジェクトの反省を踏まえて、CIMにより「効果が認められた事項」と「効果が認められなかった事項」、そして課題についても、国交省の資料を抜粋する形でまとめている。

 効果が認められた事項としては、打ち合わせ時に「相互理解の促進が図れた」、「アイデア発想が短時間に可能になる」などの可視化による効果や、「不整合個所が瞬時に判明し効果的」、「鉄筋干渉チェックに効果的」などの干渉チェック機能の効果、「3Dモデルから図面作成が可能で設計ミスの防止に効果がある」、「数量の自動算出による相当の効率化が可能」といった3Dモデルからの図面、数量表の自動作成の効果などが挙げられている。

 一方、効果が認められなかった事項や課題としては、「ソフト間のデータ授受が非効率であった」、「データが重く費用対効果が望めないものがある」、「パソコンなどのハードのスペックが不足」、「仮設・施工計画での作業量と効果が見合わない」などが挙げられた。

 報告書では効果が認められなかった事項や課題は、業務完了後に発注者側でヒアリングを行うなど、技術面や制度基準面での課題として引き続き検討を続けるとしている。この部分には受注者側の生産性向上を阻害している部分を発注者側も認識し、受発注者間でコミュニケーションを図りながら、CIMによる生産性向上を実現していこうという積極的な意思が感じられた。