ソフトは使用時間で料金を払う流れに

 スイート化やクラウド化とともに、ソフトウエアのパッケージ販売から使った期間に応じて料金を徴収するシステムへと移行する動きもある。

 フォーラムエイトでは既に月ごとのレンタル料金制を導入している。オートデスクも「サブスクリプション」という年間料金制に特典を用意し、移行を促進している。

 月単位、年単位と、期間は異なるものの、時間無制限で使えるソフトウエアを販売するビジネスモデルから、一定期間に使った分のソフトウエア使用料を徴収するというビジネスモデルに変わりつつあると言えそうだ。

 出版やウェブデザインの分野で使われているアドビ システムズも様々なスイート製品を発売している。スイート製品、個々のソフトを問わず、パッケージソフトとして販売するのは現在、店頭で流通している在庫だけで、今後は1カ月、3カ月、1年といった使用期限のあるサブスクリプションに切り替えていく方針のようだ。

 筆者もある家電量販店に出掛けたところ、店頭の陳列棚にはサブスクリプションのIDやパスワードを購入するためのカードが並んでいるだけだった。箱にディスクなどが入った従来のパッケージソフト型スイート製品は、店員に頼んでレジ裏の商品棚から取り出してもらう必要があった。

 ソフトのサブスクリプション化は、ソフトベンダーにとっては、毎年安定的に収入が期待できる、海賊版による被害を抑えられるなどのメリットが期待できる。一方、ユーザーにとっては、最新版を割安に使える、使用頻度の低いソフトも気軽に使えるなどのメリットがあるだろう。

 サブスクリプション化により、知的財産に対する日本人の感覚も変わってくるかもしれない。これまではCDやマニュアルなどが箱に入った有形の「モノ」としてソフトウエアを買っていたが、今後は紙切れに書かれたパスワードという無形の「情報」にお金を払うことになる。

 アイデアやノウハウ、BIMモデルデータなど、無形の知的財産に対して日本人はお金を払いたがらないという傾向がこれまではあったかもしれない。しかし、サブスクリプション化でソフトウエア自体が有形から無形の製品に変わり、それに対してお金を払う習慣が浸透していけば、BIMパーツや設計時に作成したBIMモデルデータなど、無形の知的財産の金銭的価値も評価され、設計事務所などの新製品・新サービスとして生かしやすい時代になってくるのではないだろうか。


家入龍太(いえいり・りょうた)
家入龍太(いえいり・りょうた) 1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。