ある分野の業務に使う複数のソフトウエアをまとめて販売する「スイート(SUITE)」製品が設計分野でも増えている。オートデスクは以前からBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の「Building Design Suite」や土木、プラント向け製品などを発売しているほか、フォーラムエイトも今年「仮設土工スイート」など8種類の製品を発売する。これらのスイート製品はクラウドとの連携にも力を入れており、BIMやCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)でのデータ一貫利用がしやすくなる。またソフトの利用期間に応じた料金制度は、ソフトや設計データに対する認識を変える可能性がある。

 フォーラムエイトは、1995年にウィンドウズが発売される前の80時代から「橋台の設計」、「擁壁の設計」、「BOXカルバートの設計」といった土木設計の実務に密着した様々な設計ソフトを発売してきた。これらのソフトのバージョンはこれまでに十数回もバージョンアップを続けている。

フォーラムエイトの様々な設計ソフト。擁壁の設計(左上)、クライミングクレーンの設計計算(右上)、プラント基礎の設計(左下)、3D配筋機能(右下)(資料:フォーラムエイト)
フォーラムエイトの様々な設計ソフト。擁壁の設計(左上)、クライミングクレーンの設計計算(右上)、プラント基礎の設計(左下)、3D配筋機能(右下)(資料:フォーラムエイト)

伝統あるソフトが「スイート」として結集

 これらの伝統あるソフトが今年4月から8月にかけて、「仮設・土工」や「下部工基礎」、「港湾シリーズ」など、8つの「UC-1エンジニア・スイート」シリーズとして、発売されることになった。

スイート製品の発売スケジュール(資料:フォーラムエイト)
スイート製品の発売スケジュール(資料:フォーラムエイト)

 「スイート」とは甘い(Sweet)ではなく、複数の部屋からなるホテルのスイート(Suite)ルームのように、「ひとまとまりになっている」という意味だ。つまり、1つの分野に関する複数のソフトやサービスをパッケージにまとめた製品を表す。

 例えば、5月初旬に発売予定の「下部工基礎スイート(Advanced Suite)」は、橋脚や橋台、支承、フーチング、杭基礎、置換基礎などの設計を行う10本のソフトで構成されている。橋梁下部工の設計業務に必要なソフトばかりだ。

 これらの製品を別々に購入すると合計264万円(税別)かかるが、スイート製品だと139万円(同)とほぼ半額で買えることになる。各スイート製品は、含まれるソフトの種類や本数によって「Advanced」、「Senior」、「Ultimate」といった種類に分かれている。

●下部工基礎スイート(Advanced Suite)の製品構成
連番ソフト名単体価格(税別。円)
1橋脚の設計350,000
2橋脚の設計(カスタマイズ版)320,000
3橋台の設計350,000
4橋台の設計(カスタマイズ版)320,000
5震度算出(支承設計)220,000
6震度算出(支承設計)(カスタマイズ版)220,000
7フーチングの設計計算60,000
8基礎の設計計算、杭基礎の設計350,000
9基礎の設計計算、杭基礎の設計(カスタマイズ版)350,000
10置換基礎の設計計算100,000
合計2,640,000
下部工基礎スイート(Advanced Suite)の価格1,390,000

 これまでのように個々のソフトを必要に応じて買うという方法だと、価格も高い。基礎の設計を行う機会が多い設計事務所やコンサルタントでも、これだけのソフトをずらりと「全集」のようにそろえるのは難しかったのではないだろうか。それがスイート製品だと、フォーラムエイトの場合は半額程度の値段でそろえられるのだ。

 これまで頻度の高い設計は専用ソフト、頻度の低い設計は表計算ソフトや手計算と、使い分けて手作業で報告書などを作ってきた会社は、スイートを導入すればすべてまとめてルーティンワークを処理できるようになるので、効率化が行いやすくなったと言えそうだ。