スマートハウスの国内市場規模は拡大し続け、2020年度には1兆3000億円近くにまで成長するという予測もある。今後販売する住宅をすべてスマートハウスにするというタマホームのようなメーカーの出現や、中小の工務店の参入など、住宅業界の動きも加速している。政府も様々な補助金や減税などの優遇策でスマートハウスの普及を支援している。

 スマートハウスとは、高効率な給湯器や太陽光発電システム、蓄電池などの“省エネ・創エネ・蓄エネ設備”を備え、これらをHEMS(住宅用エネルギー管理システム)によって連携させて消費電力の見える化や自動制御することで、従来より少ないエネルギー使用量で最適化する住宅だ。東日本大震災の原発事故や計画停電をきっかけに、電力危機や災害に対応する機能が注目され、大手ハウスメーカーを中心に商品化が進んだ。

全棟をスマートハウス仕様にするタマホーム

 タマホームは、「T-SMART」というブランドのスマートハウスを展開しているが、今年6月からさらに事業を拡大することになった。原則として、同社が販売する新築住宅の全棟に標準仕様としてHEMSを導入するというのだ。

タマホームのスマートハウス「T-SMART」の例(資料:タマホーム)
タマホームのスマートハウス「T-SMART」の例(資料:タマホーム)


 HEMSには「ECHONET Lite(エコーネットライト)」という標準規格があるものの、現在、市販されているHEMSや家電などの関連機器は、インターフェースやデータ形式が統一されていないため、異なるメーカーの製品を接続して情報収集や分析を行うのは難しい。

 そこでタマホームは「サービス・デリバリー・プラットフォーム(SDP)」というクラウドベースの情報基盤を採用した。SDPは異なるネットワークやシステム間でも接続できるオープンなIT基盤ソリューションだ。SPDは日本IBMのシステムを採用している。

 そのため、HEMSや関連機器も特定メーカーの製品に依存することなく、様々なメーカーの製品を組み合わせてデータの収集や一元管理、電力の見える化などが行える。

 また、インターネットを通じてスマートハウスの情報をクラウドサーバーで処理する仕組みのため、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などを介してネット経由でどこからでもHEMSの情報を見ることができる。

タマホームではこのクラウドサーバーを、HEMSによる電力の見える化だけでなく、双方向型のサービスを提供する情報基盤としても位置付けており、今後、ヘルスケアや育児、趣味など生活に関連する情報を提供する開始する予定だ。HEMSをエネルギーの見える化だけでなく、生活全般にわたる様々な情報を提供する窓口として活用する戦略だ。今後、HEMS端末はテレビのような役割も担うことをうかがわせる。

HEMSを通じた情報サービスのイメージ(資料:タマホーム)
HEMSを通じた情報サービスのイメージ(資料:タマホーム)

 タマホームはこれまでに建てた住宅のオーナーに対しても、HEMSの後付けサービスを販売する予定で、今後3年間で新築3万棟、既築2万棟をスマートハウス化できると見込んでいる。