CNC(コンピューター数値制御)の工作機械とコンピューターを連携し、設計したデータを部材の加工に使用する「デジタルファブリケーション」が大型化してきた。英国の工務店、ファーシット・ホームズ社(Facit Homes)は、現場に木工用のCNCルーターを持ち込み、ベニヤ板を現場で切断しながら住宅を建てる新工法「Dプロセス(D-Process)」を実践している。

 木工用のCNCルーターとは、テーブルの上に縦横に動くアームと、上下に動くルーターヘッドが付いたコンピューター制御の工作機械だ。テーブルに定尺のベニヤ板を載せ、ルーターには回転式の刃物を取り付ける。

 アームやルーターヘッドは、ひと昔前のXYプロッターのように、コンピューターで作成した展開図通りに動き、木材を自動的に切断したり、溝を掘ったりする。

CNCルーター付きコンテナで現場加工

 英国の工務店、ファーシット・ホームズ社は、このCNCルーターを内蔵したコンテナを住宅の建設現場に持ち込み、現場でベニヤ板を切り出しては箱型の部材を数百個単位で作り、現場で組み立てていく、という新しい工法「Dプロセス」を実践している。「D」にはデザイン、デジタル、データ、ディテールの意味を込めている。

CNCルーターを搭載したコンテナ。現場に搬入し、ベニヤ板を切断しては箱状の部材を作る(Image: Courtesy of Facit Homes)
CNCルーターを搭載したコンテナ。現場に搬入し、ベニヤ板を切断しては箱状の部材を作る(Image: Courtesy of Facit Homes)

重機を必要としない運搬と据え付け作業

 通常のプレハブ住宅は、工場で材料を加工し、ある程度部屋の形に組み立てた大きな部材をトラックやトレーラーで現場に搬入し、クレーンなどの重機を使って組み立てる方法が一般的だ。この方法だと部材が大きくなるので現場搬入や据え付けは大がかりな作業になる。

 一方、CNCルーターを現場に持ち込んで材料加工から部材の組み立て、現場での取り付けまでを行う方法だと、搬入するのはベニヤ板などコンパクトなもので済み、現場でも大がかりな重機はほとんど使わない。

CNCルーターによるベニヤ板の自動切断(Image: Courtesy of Facit Homes)
CNCルーターによるベニヤ板の自動切断(Image: Courtesy of Facit Homes)

部材の切断や彫刻を行うCNCルーターのルーターヘッド部分(Image: Courtesy of Facit Homes)
部材の切断や彫刻を行うCNCルーターのルーターヘッド部分(Image: Courtesy of Facit Homes)