製造業に学び、BIMでさらなる生産性向上を
今回のプロジェクトでは、建物の内外装から構造、設備に至るまで、すべての部材をBIMモデル化し、干渉部分や作業手順などを徹底的に検討してから図面を作成し、現場の作業員を含めて全員で情報共有を進めながら施工した。その結果、米国の工事としては珍しく、コスト超過などの問題もなく完成にこぎ着けた。
従来の建設プロセスの欠点を何とかBIMで改善したいというヘンダーソン社長の強い思いと、製造業の業務や手法を経験してきた技術者が、建設業の伝統的な分業体制にとらわれず、最も合理的な業務プロセスを採用し、実行したことがプロジェクトを成功に導いた大きな理由だろう。
ダッソー・システムズは、製造業で培った3D設計による効率的なワークフローを建設業にも応用する「リーン・コンストラクション(Lean Construction)」というコンセプトを展開し始めた。
日本は、“BIM元年”と言われた2009年から今年で5年目を迎えた。多くの建築設計事務所や建設会社がBIMを導入し、それなりに使いこなしているものの、従来の分業体制やプロセスの中で生産性向上の限界を感じている企業も多い。
その一方では、BIMの限界を打開すべく、製造業の3D活用の手法をあらためて見直し、建設業に採り入れようと動き出している企業もある。それは従来の設計・施工分離方式やプロジェクトの金額がプロジェクトの途中で決まる積算・見積もりのタイミング、設備工事会社決定の遅さなどを根底から見直し、新しいBIM活用の仕組みを作るチャレンジでもある。
日本のBIM活用が生産性向上の壁を乗り越えるためには、設計・施工・維持管理のプロセスと責任分担体制を理想的な姿に変革していくことが今、求められているのではないだろうか。そのためにも、国際的な競争の下で製造業が培ってきた業務プロセスは大いに参考になるはずだ。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/。ツイッターやfacebookでも発言している。