グーグルが無償提供しているバーチャル地球儀ソフト「Google Earth(グーグルアース)」をさらにパワフルにするのは、様々なリアルタイム情報や3Dモデルなどをグーグルアース上に重ねて表示できる「kml」というファイルだ。昨年3月からはiPadやAndroid端末などでもkmlが使えるようになり、海外では不動産情報や交通情報、地震情報などを発信するためのプラットフォームとしての地位が定着しつつある。
2月11日、ある国会議員が尖閣諸島付近の艦船の動きについて「グーグルアースか何かで見れば分かりますよ」と発言して、ネット上ではその発言を冷やかす声で“祭り”となった。
翌日の昼過ぎ、テレビ画面に北朝鮮が核実験を行ったというニュース速報のテロップが流れると、インターネットの掲示板には「グーグルアースを見たけど何にも起こってないぞ」などと、またまた「グーグルアース」が飛び交った。
その時、筆者もグーグルアースを立ち上げた。そして、発生時刻は11時57分、震源深さは1.0km、マグニチュードは4.9(当初発表の値。その後5.1に修正)といった情報とともに、北朝鮮の地図上に表示された爆心地と推定される位置を見つけた。冗談のような話だが、まさにグーグルアースで北朝鮮の核実験を“見た”のである。
正体は米国発のリアルタイム地震情報
種明かしをすると、筆者は米国地質調査所(USGS)が提供している「リアルタイム地震情報」をグーグルアース上に表示させたのだ。
USGSのウェブサイトでは、リアルタイム地震情報をグーグルアース上で見られる「kmlファイル」が提供されている。このうち、過去30日間に発生した地震の発生時刻や震源位置、マグニチュードなどを表示する「Real-Time Earthquakes, Past 30 Days」をグーグルアースで読み込めば、今回の核実験も、実験時刻にネットにアクセスしていればほぼ“リアルタイムに見られる”のである。
筆者はこのkmlファイルを5~6年前から愛用しており、国内外で大きな地震が起こるたびにグーグルアースを起動して地震発生場所を見てきた。2009年5月25日にやはり北朝鮮で行われた核実験の情報もグーグルアースで見ている。この時はマグニチュード4.7だったが、今回の実験はマグニチュード5.1だった。北朝鮮の核実験が大規模化していることがうかがえるデータだ。
このUSGSの情報は、やはり地震が起こった時の状況判断に役立つ。地震の揺れを感じた時に震源地やマグニチュードの詳細な値がすぐに分かることで、震源地付近に自社が設計・施工を担当した建物や構造物があった場合の対応策をスピーディーに検討できる。遠隔地や海外などの地震では、貴重な情報源となる。
また、30日前までの震源地が分かるので、複数の地震の震源を比較して同じ場所か、それとも別の場所に移動しているのかなどを確認したり、余震の数を確認したりする時も分かりやすい。