グーグルが無償提供しているバーチャル地球儀ソフト「Google Earth(グーグルアース)」をさらにパワフルにするのは、様々なリアルタイム情報や3Dモデルなどをグーグルアース上に重ねて表示できる「kml」というファイルだ。昨年3月からはiPadやAndroid端末などでもkmlが使えるようになり、海外では不動産情報や交通情報、地震情報などを発信するためのプラットフォームとしての地位が定着しつつある。

 2月11日、ある国会議員が尖閣諸島付近の艦船の動きについて「グーグルアースか何かで見れば分かりますよ」と発言して、ネット上ではその発言を冷やかす声で“祭り”となった。

 翌日の昼過ぎ、テレビ画面に北朝鮮が核実験を行ったというニュース速報のテロップが流れると、インターネットの掲示板には「グーグルアースを見たけど何にも起こってないぞ」などと、またまた「グーグルアース」が飛び交った。

 その時、筆者もグーグルアースを立ち上げた。そして、発生時刻は11時57分、震源深さは1.0km、マグニチュードは4.9(当初発表の値。その後5.1に修正)といった情報とともに、北朝鮮の地図上に表示された爆心地と推定される位置を見つけた。冗談のような話だが、まさにグーグルアースで北朝鮮の核実験を“見た”のである。

2月12日の正午過ぎ、グーグルアースで見た北朝鮮の核実験が行われた場所(資料:Google Earth, USGS)
2月12日の正午過ぎ、グーグルアースで見た北朝鮮の核実験が行われた場所(資料:Google Earth, USGS)

正体は米国発のリアルタイム地震情報

 種明かしをすると、筆者は米国地質調査所(USGS)が提供している「リアルタイム地震情報」をグーグルアース上に表示させたのだ。

 USGSのウェブサイトでは、リアルタイム地震情報をグーグルアース上で見られる「kmlファイル」が提供されている。このうち、過去30日間に発生した地震の発生時刻や震源位置、マグニチュードなどを表示する「Real-Time Earthquakes, Past 30 Days」をグーグルアースで読み込めば、今回の核実験も、実験時刻にネットにアクセスしていればほぼ“リアルタイムに見られる”のである。

USGSのウェブサイトではリアルタイムの地震情報をグーグルアース上で見られるkmlファイルが無償提供されている(資料:USGS)
USGSのウェブサイトではリアルタイムの地震情報をグーグルアース上で見られるkmlファイルが無償提供されている(資料:USGS)

 筆者はこのkmlファイルを5~6年前から愛用しており、国内外で大きな地震が起こるたびにグーグルアースを起動して地震発生場所を見てきた。2009年5月25日にやはり北朝鮮で行われた核実験の情報もグーグルアースで見ている。この時はマグニチュード4.7だったが、今回の実験はマグニチュード5.1だった。北朝鮮の核実験が大規模化していることがうかがえるデータだ。

2009年の核実験はマグニチュード4.7だったのに対し、2013年2月の実験ではマグニチュード5.1(速報値は4.9。その後修正)となり、実験が大規模化していることがうかがえる(資料:Google Earth, USGS)
2009年の核実験はマグニチュード4.7だったのに対し、2013年2月の実験ではマグニチュード5.1(速報値は4.9。その後修正)となり、実験が大規模化していることがうかがえる(資料:Google Earth, USGS)

 このUSGSの情報は、やはり地震が起こった時の状況判断に役立つ。地震の揺れを感じた時に震源地やマグニチュードの詳細な値がすぐに分かることで、震源地付近に自社が設計・施工を担当した建物や構造物があった場合の対応策をスピーディーに検討できる。遠隔地や海外などの地震では、貴重な情報源となる。

今年2月6日南太平洋で発生したマグニチュード8.0の大地震。海外の地震も詳細な情報が分かると海外物件に対する対策も行いやすい
今年2月6日南太平洋で発生したマグニチュード8.0の大地震。海外の地震も詳細な情報が分かると海外物件に対する対策も行いやすい

 また、30日前までの震源地が分かるので、複数の地震の震源を比較して同じ場所か、それとも別の場所に移動しているのかなどを確認したり、余震の数を確認したりする時も分かりやすい。