標準プラットフォームに向けた情報提供を
グーグルアースやグーグルマップスなどは、いまや一般ユーザーだけでなく、鉄道などの維持管理業務でも幅広く使われている地理情報の標準プラットフォームと言えるほどになった。
日本では2011年の東日本大震災直後に、カーナビを搭載したクルマが通れた道の情報をグーグルアースで見られるようにするなど、グーグルアースを使った情報提供が活発に行われた時期があった。しかし、最近は復旧・復興の進展とともに、グーグルアース上での情報提供も停止されることが増えている。
一方、国土交通省などは道路や河川に配置したウェブカメラの映像や、河川の水位データを、ウェブサイト上では公開しているものの、グーグルアースなどの標準的なプラットフォームで見られるようにした例は少ない。これは洪水や土砂崩れなどのハザードマップについても言える。
施設管理者が、自前のウェブサイトで施設の状況についての情報提供を行うのはもっともなことだ。しかし、一般ユーザーにとっては、いざという時に必要な情報が役所のウェブサイトに用意してあっても、その存在を知らず、結局利用しないことが多いのではないだろうか。
ウェブサイトで発信できる情報があれば、次に求められるのは、それをグーグルアースなど標準プラットフォーム向けに加工して公開することではないだろうか。
自前のウェブサイトだけでの情報提供は、管理者本位の「プロダクトアウト」的な満足にすぎない。多くのユーザーが日ごろ使っている情報のプラットフォームに合わせた形で発信することこそ、ユーザー本位の「マーケットイン」的な情報提供なのだ。
冒頭、北朝鮮の核実験の位置をグーグルアース上で即座に推定することができたのは、米国のUSGSがグーグルアースのユーザーを意識した情報発信をしていたおかげだ。地震や洪水、津波、火山噴火、そしてパンデミックなど、日本列島には今後、数々の災害が予想されている。その時、せっかくの情報を有効に利用するためにも、国土交通省を中心に、標準プラットフォームを活用したユーザー本位の情報発信が、これからの政府のICT政策として求められているのではないだろうか。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/。ツイッターやfacebookでも発言している。