国交省事務次官に就任した佐藤氏はCIM推進派

 佐藤氏は数年前から土木分野へのBIMやCIMの導入を提唱してきた。2008年、同省の技術審議官時代には当時、国交省がまとめた「イノベーション推進大綱」に登場する「次世代型CAD」という言葉について「これはBIMを意味する」と発言した。

 同年に国交省中部建設局長に就任すると「建設ICT導入研究会」(当時)を発足させ情報化施工の実工事への導入・普及を局長としてけん引した。この研究会は現在も建設ICT導入普及研究会として積極的に活動を続けている。

 そして2011年に同省技監となった後には「CIM」という言葉を使い、セミナーなどで建設投資の減少が予想される日本の建設市場には生産性向上を図る手段としてCIMの重要性を説いた。

2012年4月13日、東京・麹町で開催されたJACIC主催のセミナー、「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ~建設生産システムのイノベーションに向けて~」でCIM導入の重要性を説く技監当時の佐藤氏(左)と超満員の会場(右)(写真:家入龍太)
2012年4月13日、東京・麹町で開催されたJACIC主催のセミナー、「CALSの15年を振り返り、新たなステージへ~建設生産システムのイノベーションに向けて~」でCIM導入の重要性を説く技監当時の佐藤氏(左)と超満員の会場(右)(写真:家入龍太)

 ちなみに佐藤氏は、東京工業大学で大学院まで土木工学を専攻した。2012年末に国土交通大臣に就任した太田明宏氏も土木の専門家だ。京都大学で大学院まで土木の耐震工学を専攻し、修士論文は「土木構造物の非線形振動論」を書いた。コンピューターもあまり普及していなかった1970年代初頭に、非線形振動論という最先端の研究を行っていたのだ。

 土木の専門家が国交省の大臣、次官という「ツートップ」を務める2013年は、最新技術に対する理解も十分にありそうだ。CIM普及に向けてのトップダウンのパワーはこれまでにない威力を発揮するに違いない。