汚水の浄化システム工事を手がける米国の小さな土木会社、グラディー・コンサルティング社は、2008年のリーマンショックで業績の落ち込みはピークに達した。そこで業務内容を見直し、思い切って2010年に3Dレーザースキャナーや3次元CADシステムを導入した。その結果業務効率化や業務・顧客の拡大の効果で業績は急回復。2011年には過去最高の売上高を更新した。その勢いは今年も続いている。2012年11月に米国・ラスベガスで開催された「Autodesk University 2012」で同社社長のリチャード・グラディー氏の発表内容を紹介しよう。


 米国マサチューセッツ州キングストンのグラディー・コンサルティング社(Grady Consulting, L.L.C.)は、公共下水道がない地域の住宅が汚水を処理するための「セプティックシステム」という浄化システムの設計・施工を中心に手がける小さな土木会社だ。社長のリチャード・グラディー氏が、1998年に自宅の「プレイルーム」をオフィスとして創立した。

 同社は家族経営で少しずつ規模を拡大してきたが、2008年のリーマンショックで業績が低迷した。その時にあえて本社ビルを新築し、従業員を雇ったものの、経営状態は改善しなかった。そこで、設備、ソフトから業務プロセスまでを見直すことにした。

Autodesk University 2012の会場で講演するリチャード・グラディー氏(左)。現在のグラディー・コンサルティング社のオフィス(右)(写真左:家入龍太、写真右:Courtesy of Grady Consulting)
Autodesk University 2012の会場で講演するリチャード・グラディー氏(左)。現在のグラディー・コンサルティング社のオフィス(右)(写真左:家入龍太、写真右:Courtesy of Grady Consulting)

業務見直しで3Dレーザースキャナーを導入

 たどりついた結論は、3次元設計の導入による効率化だった。2010年に土木設計用3次元CAD「AutoCAD Civil 3D」を導入し、ワークステーションも5台、高機能な機種を導入した。そしてライカの3Dレーザースキャナー「ScanStation C10」と点群処理用のソフト「ライカHDS」も導入した。3Dレーザースキャナーは数百万円から1000万円以上する高価な測量機器だ。企業規模が小さく売り上げも低迷していた同社にとって、思い切った投資だった。

2010年に導入した3Dレーザースキャナー。ライカの代理店の支援もあり、操作はスムーズだった(Photo:Courtesy of Grady Consulting)
2010年に導入した3Dレーザースキャナー。ライカの代理店の支援もあり、操作はスムーズだった(Photo:Courtesy of Grady Consulting)