シンガポールで建設中の新競技場「スポーツハブ」は、開閉式ドーム、移動式観客席、そして優れた環境性能と、最新技術を導入している。その設計にはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)がフルに活用され、鉄骨の主構造部をスレンダーに見せるデザインの検討から、鋼構造のスリム化によるコスト削減、そしてBIMデータを利用した鉄骨部材の製作までを行っている。

 シンガポール国立競技場は、建設中の「シンガポール・スポーツハブ」(面積35ヘクタール)の中核となる施設だ。競技場をまたぐ直径310mのドーム屋根は、競技場の観客に日陰を与え、雨から守るとともに、ランドマーク的な役割を果たす。

 競技場の横には富士山形の特徴的な屋根のあるシンガポール屋内競技場が建ち、すぐ隣には海がある。海面にこれらの建物が反射したときに、シンガポールの最も印象的なシルエットとするためにも、富士山形の屋内競技場とは対照的にシンプルなドーム形のデザインを選んだ。

シンガポール・スポーツハブの完成予想図(資料:ARUP SINGAPORE)
シンガポール・スポーツハブの完成予想図(資料:ARUP SINGAPORE)

海面に映った国立競技場のシルエットCG(左側)。富士山形の既設屋内競技場(右側)との調和を考えてデザインされた(資料:ARUP SINGAPORE)
海面に映った国立競技場のシルエットCG(左側)。富士山形の既設屋内競技場(右側)との調和を考えてデザインされた(資料:ARUP SINGAPORE)

 この競技場の意匠設計や構造設計を担当したアラップ・シンガポール社は、BIMで意匠と構造を統合した設計プロセスを導入するとともに、様々な解析ソフトによって省エネ性能にも優れた設計をまとめたのだ。