現地従業員を愛知県の工場で研修

 ベトナム人の人件費は日本の10分の1程度と言われる。一方、多能工が少なく職種が分かれているため、日本の工場なら10人でできることが20人必要ということも多い。そして自分の職種にしか責任を持たないという傾向もある。

 「作業員に日本流のものづくりを教えるため、愛知県にあるIHIの工場で労働者に対する研修も行った」と山本氏は説明する。「日本人と現地スタッフとの親交を深め、チームワークを高めるため、日本流のスポーツ大会やパーティーなども行っている」(同)。

日本流ものづくりの中で重要な役割を果たす作業員(写真:家入龍太)
日本流ものづくりの中で重要な役割を果たす作業員(写真:家入龍太)

 工場内の雰囲気に日本的な整然さとまとまりが感じられるのは、こうした日本流のものづくり教育のためだろうか。山本氏によると、品質管理体制、検査とも日本と同等レベルを実現し、出来上がった橋桁の品質も日本で製作するのと同等レベルを実現しているという。

 「完成した橋桁は、発注者であるベトナム政府の検査を受けるが、その検査員も本州四国連絡橋公団のOBである日本人コンサルタントが務めている。つまりベトナムにいながら日本と同様の検査を行っていることになる」(山本氏)。

工場の一角には検査に使われた橋桁の部材がモニュメントのように設置してあった(写真:家入龍太)
工場の一角には検査に使われた橋桁の部材がモニュメントのように設置してあった(写真:家入龍太)