BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を駆使して短時間で課題の建物を設計する仮想コンペ「Build Live Chiba 2012」(主催:IAI日本)が9月26日から30日にかけて開催された。これまでのBuild Liveでは、意匠・構造・設備の設計や施工計画などをBIMで行い、いかに効率化を実現するかという“フルBIM”の可能性を追求するチームが目立ったのに対し、今回参加の社会人チームは、3チームそれぞれが“フルBIM”とは違ったテーマを掲げて挑戦した。そこにBIM活用の未来像が垣間見える。

 BIMの仮想コンペ「Build Live Chiba 2012」(以下、BLC)は、48時間(学生は96時間)という時間制限の中でBIMを活用した設計の腕を競う競技だ。今回の課題は、東京湾アクアラインの千葉県側取り付け部に隣接する再開発区域の敷地に、オフィスやショールーム、飲食・物販点などからなる床面積約1万4000m2の「オープン・オフィス・モール」を計画することだ。

 課題には「計画建物の BIM 情報を設計、建設、運用、利用など多方面に活用することによって、設計者や施工者のみならず、オーナーや入居企業、利用者、周辺地域、住民にとって、建物の魅力や価値を高め、それぞれの活力や利便性、安全性などの向上に生かすことのできるライフスタイルの提案にまでに発展させることが望まれる」とあるものの、どこまで詳細な設計にするのかは各チームに任されている。

 社会人を対象とする「実務クラス」は、大林組、セコム、前田建設工業をそれぞれ中心とする3チーム(前回は8チーム)、学生を対象とする「学生クラス」には9チーム(前回は8チーム)が参加した。

Build Live Chiba 2012参加チーム

    実務クラス(3チーム)

  • チーム「スカンクワークス」(前田建設工業)
  • チーム「Chain-Diver」(大林組)
  • チーム「Space Innovation Lab.」(セコム)

    学生クラス(9チーム)

  • チーム「Cicadas」(芝浦工業大学)
  • チーム「東京都市大学デザインマネジメント研究室」(東京都市大学)
  • チーム「KIG」(慶應義塾大学大学院)
  • チーム「KIV」(慶應義塾大学大学院)
  • チーム「大阪市立都島工業高等学校 よんすけ」(大阪市立都島工業高等学校)
  • チーム「Infinity」(国士舘大学)
  • チーム「金沢工業大学」(金沢工業大学)
  • チーム「K&U」(熊本大学)v
  • チーム「Hora Fugit. 」(東北工業大学)

 課題となった敷地の周囲には業務・物流用地域や商業用地域のほか、田んぼや住宅地、公園用地、水路などがある。既存の建物が林立する都心部とは異なり、かなり設計の自由度が高いのが特徴だ。

 実際の敷地は用途地域の設定が暫定的で第一種低層住居専用地域(建ぺい率30%、容積率50%)となっているため、BLCでは容積率を200%、建ぺい率を80%と仮定した。

千葉県木更津市の東京湾アクアライン取り付け部付近に設定された「Build Live Chiba 2012」の課題敷地(資料:IAI日本)
千葉県木更津市の東京湾アクアライン取り付け部付近に設定された「Build Live Chiba 2012」の課題敷地(資料:IAI日本)

課題の建物に求められる主要施設の内訳と面積(資料:IAI日本)
課題の建物に求められる主要施設の内訳と面積(資料:IAI日本)

 Build Liveは2009年に「Build Live Tokyo 2009」として初めて開催され、今回で5回目となる。これまでは意匠・構造・設備を含めた設計や解析、シミュレーションをBIMによっていかにスピーディーに行えるかという、“フルBIM”の可能性を追求するチームが目立った。

 しかし、今回社会人部門で参加した3チームは違った。“フルBIM”を追求するチームはなく、それぞれが独自のテーマを掲げて課題に挑んでいた。各チームが異口同音に言うのは、「“フルBIM”は昨年までのBuild Liveでやり切った」というものだった。各チームは今回のBLCで何を目指したのだろうか。