東日本大震災の被災地では、震災がれきの分別処理や建物の復旧、土壌の除染、原発の復旧作業などが懸命に進められている。この作業を加速するため、情報化施工や無人化施工の技術やクラウドコンピューティングなどのIT技術の導入も進んでいる。この震災を教訓に、残された建物を復興拠点としていち早く稼働させるための技術も開発された。


 東日本大震災の被害は、「1000年に1度の巨大な津波によって100年分のがれきが出た」とも言われるほど大きなものだった。被災地のあちこちに仮置きされた震災がれきの分別処理では、多数のダンプトラックが行き交い、交通渋滞の原因となっている。

 被災地で崩壊を免れた建物も、一刻も早く復旧活動の拠点として稼働させることが求められる一方、余震に対する安全性の確認に手間取り、稼働が遅れる面もあった。また、福島第一原子力発電所の事故によって、放射性物質が広大な範囲にまき散らされた結果、公園や広場などの除染も手つかずのところがある。放射線量が高く、人が近づきにくい原発自体も、早期の復旧が求められている。

 こうした様々な問題を解決するため、ITによる廃棄物処理の管理手法や建物の安全性診断手法の開発、除染計画の作成、そして原発の復旧作業が行われている。これらは被災地の復興を加速するだけでなく、通常の建設工事においても、情報化施工の技術力向上や産業廃棄物処理の効率化を後押しする技術として活用できそうだ。

がれき編:廃棄物統合管理システム(奥村組と伊藤忠テクノソリューションズ)

クラウドでダンプ渋滞を防ぐ!電子マニフェストとも連動

 被災地のあちこちに仮置きされた震災がれきは、処理ヤードに運搬して、土砂や木材、コンクリートガラ、金属など十数種類に選別・破砕し、所定の処分場に搬出するという手順で処分するのが一般的だ。

 この作業をスピーディーに行うためには多くの人員や、それぞれの処理工程や全体の進ちょく状況などをいかに効率的に管理するかという課題があった。

 そこで、奥村組と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は「廃棄物統合管理システム」を開発した。クラウドコンピューティングを使って分別されたがれきを処分場に運搬するダンプトラックの運行状況や、積み荷となる廃棄物の種類、搬出入するがれき重量などの情報を一元的に収集・管理できるシステムだ。このたび岩手県山田地区の災害廃棄物処理業務で、運用を始めた。

「廃棄物統合管理システム」のイメージ図(資料:奥村組、CTC)
「廃棄物統合管理システム」のイメージ図(資料:奥村組、CTC)

稼働中の重量管理システムからの帳票出力例と使用機器など(資料:奥村組、CTC)
稼働中の重量管理システムからの帳票出力例と使用機器など(資料:奥村組、CTC)

 この廃棄物統合管理システムは、CTCが提供している「移動体資産管理クラウドサービス」と、情報の可視化と共有を目的とした「クラウデージポータル」という2つのサービスを相互にリンクさせたものだ。

 ダンプトラックの積み荷の種類や重量、搬出元、受け入れ先などの情報を記録したQRコード(2次元バーコード)を作成し、ダンプトラックが処理ヤードに入退場する時、QRコードをリーダーに読み取らせることによりデータを自動的に収集、種別ごとの処理量を管理している。

 さらに、産業廃棄物などの処分では、電子マニフェスト制度(インターネット上で産業廃棄物管理票=マニフェストの処理を行う仕組み)を導入し、QRコードの情報と連携させることで、受け入れ先での処分も確認できようにした。こうして十数種類に選別された廃棄物をそれぞれの受け入れ先へ効率的に搬出できるようになった。

 震災がれきの輸送に際しては、ダンプトラックによる交通渋滞を緩和させることが求められている。そこでダンプにはGPS機能付きの情報端末を搭載し、走行位置や速度などの情報を収集し、交通状況に応じた運行管理も行っている。

 これらの情報は一元管理され、専用ポータルサイトで廃棄物処理の進ちょく状況などをリアルタイムに可視化することで、発注者との情報共有も進んだという。

専用ポータルサイトによる業務進ちょく状況の表示。インターネット上でリアルタイムに確認できる(資料:奥村組、CTC)
専用ポータルサイトによる業務進ちょく状況の表示。インターネット上でリアルタイムに確認できる(資料:奥村組、CTC)