自家発電で1週間持ちこたえる京橋トラストタワー

 森トラストが東京・京橋で建設中の「京橋トラストタワー」は、オフィスやホテル、商業施設からなる複合ビルだ。その規模は地上21 階、地下3 階、延床面積約5万2000m2。超高層ビルが法的に求められるレベルの約1.5倍の耐震性能をもつ「ハイブリッド制震構造」を採用している。

 このビルは東日本大震災の際、同社が仙台に保有する物件で得た経験を生かして、総合的な防災性能を見直した。その大きな特徴は、強力な自家発電能力だ。通常時の電力需要を最大約8 割カバーする非常用発電機を導入し、停電時にはテナント専用部も含めて約1週間の事業継続ができるようにする。変電施設や配電線の復旧期間を考慮して、長期停電に備えた。

 敷地内の公開空地には、防災用仮設トイレを3つ設置できるようにし、災害時に帰宅困難者などが一時避難場所として利用できるようにすることも想定している。

京橋トラストタワーの完成予想図(資料:森トラスト)
京橋トラストタワーの完成予想図(資料:森トラスト)

 京橋トラストタワーでは、耐震性能や非常用発電機などのハード面を強化するだけでなく、森トラストグループ全体の防災ネットワークを生かした「グリッド型BCP」という独自の災害対応体制も組み込んでいる。

 各ビルだけが単独で行うBCPではない。同グループが運営する約90 の施設がグリッド(格子)のようにつながり、情報網によって各ビルが互いに人的支援、物的支援などで助け合いながら行うBCPだ。

 3月1日、森トラストグループはグリッド型BCPを使った震災訓練を実施し、グループ社員約1500人が参加した。マグニチュード7.3の首都直下型地震が冬季の平日に発生し、都心部が震度6 強の揺れに襲われたときを想定したものだ。

 地震後、5分で東京の森トラスト本社に震災対策本部を設置し、WEB会議システムにより東京本社と仙台支社、大阪のリーガロイヤルホテルの3拠点や主要施設、関連会社を接続した。

森トラストグループの東京、大阪、仙台の計6拠点に設置されている非常用発電機(写真:森トラスト)
訓練時の震災対策本部(写真:森トラスト)
森トラストグループの東京、大阪、仙台の計6拠点に設置されている非常用発電機(左)。訓練時の震災対策本部(写真:森トラスト)

 各施設からはタブレット端末を利用して動画や画像などの情報をWEB会議システムで共有した。その通信手段としては衛星電話や専用通信回線などを使い、多重通信網を確保した。そして震災ポータルサイトによって、各施設の被害状況を一元管理した。

 帰宅困難者への対応訓練では、東京の丸の内トラストシティで整理券を配布し、約100人の帰宅困難者を入館させ、テレビ番組や交通情報や物資、携帯電話充電スペースを提供した。

一般の帰宅困難者への対応訓練(写真:森トラスト)
非常用トイレの設置。下水管にも接続されている(写真:森トラスト)
一般の帰宅困難者への対応訓練(左)。非常用トイレの設置。下水管にも接続されている(右)(写真:森トラスト)