三菱重工鉄構エンジニアリングの千葉工場では、鋼橋製作の精度管理にデジタルカメラを使った写真計測システムを導入し、生産工程を効率化した。橋桁に「ターゲット」と呼ばれる反射板をいくつも取り付け、写真を撮るだけで3万5000分の1という高精度で橋桁主要部の位置を3次元で計測できるのだ。この技術は2012年1月、国土交通省のNETIS(公共工事等における新技術活用システム)の「活用促進技術」にも指定された。
パシッ、パシッとフラッシュをたきながら、1眼レフのデジタルカメラを持った技術者が塗装前の橋桁をぐるりと回りながら写真を撮っていく。三菱重工鉄構エンジニアリングの千葉工場では、毎日のようにこんな撮影が行われている。溶接が終わった橋桁が設計通りの寸法や形状に出来上がっているかどうかを計測するためだ。
1本の橋桁を約1時間で計測完了
橋桁のいろいろな部分には、フラッシュの光を反射する素材で描かれた点が縦横5列に並んだ「コードターゲット」を張り付け、橋桁の端部など位置を計測したい部分には点が一つだけの「シールターゲット」を張る。そして、両端にターゲットを取り付けた「基準バー」を長さのスケール指標として取り付ける。
こうして、橋桁の周囲をぐるりと回りながら、カメラの位置を上や下に変えていろいろな角度で写真を撮る。I桁の場合は約80枚、箱桁の場合は約120枚撮れば大丈夫だが、普通のスナップ写真のようにシャッターを押すだけなので作業のストレスはない。
撮影した写真は、橋桁横に置いてあるノートパソコンに読み込み、ソフトウエアで解析すると6分程度で計測したい点の3次元座標が求められる仕組みだ。その精度はなんと3万5000分の1と高い。長さ10mの橋桁の場合、±0.3mm以内の誤差で測れることになる。
「一つの橋桁を計測する時間は、ターゲットの張り付けや写真撮影、パソコンでの計算処理を含めて約1時間で完了する。そして一人だけで作業できる。以前はトータルステーションなどを使って計測していたが、当時に比べると計測作業の効率は3倍以上になった」と、三菱重工鉄構エンジニアリング千葉工場の大山雄司工場長は語る。
作業効率が高まったのは、トータルステーションなど光波系の計測機器に比べて取り扱いが簡単だからだ。三脚を現場に据え付ける作業も必要なく、専門的な技術もいらない。