2012/02/15
東京・後楽にある日中友好会館は、老朽化したボイラーや冷凍機などの空調設備を全面的に更新し、大幅な省エネ化を図った。日中友好会館の事務局のほか、美術館やホテル、留学生寮、レストランなど様々な施設が入居している同会館で工事のために空調を止められる期間は20日間しかなかった。そこで設備工事を担当した新菱冷熱工業は、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用。ビルオーナーなどの協力を得ながら、機器の工場製作と手戻りのない施工を実現することにより、この難工事を乗り切った。
1988年1月に完成した日中友好会館は、地上12階、地下4階建ての本館(延べ床面積:3万900.6m2)と、地上11階、地下3階建ての別館(同6892.64m2)からなる。今回、老朽化したボイラーや冷凍機などを更新・改修するため、日本ファシリティ・ソリューション(以下、JFS)が提供する「ESCO事業(Energy Service Company)」を活用した。
ESCO事業とはビルオーナーに対して既存設備の省エネルギー診断や、新しい設備設計・施工、導入設備の運用管理、事業資金の調達などを包括的に提供する。ESCO事業者は省エネ化により減った光熱費の一部を報酬として受け取る仕組みだ。国も省エネ政策の一貫として、補助金を出している。今回の工事でも2011年8月に一般社団法人 環境共創イニシアチブの平成23年度「住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業(建築物に係るもの)」による補助金の交付が決定した。
日中友好会館は以前、年間約7万3000GJの一次エネルギー消費していたが、改修後は30.5%の削減が見込まれた。それに伴い、年間1億5100万円程度だった光熱水費が4500万円以上も削減できる見通しだ。
様々な施設が入居する日中友好会館の空調設備を改修するうえで、大きな課題となったのは工事期間だ。空調を止められる期間は、「中間期」と呼ばれる11月1日から20日までの20日間しかない。この短い期間に既存設備を解体・撤去し、新しい設備を搬入・設置し、運転を開始できるようにしなければならないのだ。
空調設備の改修工事では、既存の配管と新しく設置するボイラーや冷凍機の接続などを行うため、現場で寸法を測りながら配管などを加工しながら施工する「現場合わせ」が行われがちだ。また、改修工事の設計で新旧の設備が干渉したり、搬入できなかったりすると、作業の「手戻り」も発生する。しかし、そんな悠長なことをやっていたのでは、とても20日間で施工を終えられないことは目に見えていた。
同年8月31日に工事を受注した新菱冷熱工業は、短期間で熱源設備の交換と運転再開を行うためには、現場合わせや手戻りの発生は致命的と考えた。そこでBIMを活用し、施工上の問題点を事前に徹底的につぶしておく「フロントローディング」(作業の前倒し)を行うことにした。
9月7日に開催された日中友好会館やJFSとの初会合で、現場代理人を務めた新菱冷熱工業の金子究氏と、同社の谷内秀敬氏が提案したのは「紙の図面でなく、コンピューターグラフィックス(CG)で工事の打ち合わせをさせてほしい」ということだった。日中友好会館、JFSとも初めてのことだったが、この提案を了承した。
日中友好会館資産管理部副部長の平岡靖氏は、建築設計者として自らも20年ほど前から3次元CADを使っていたものの、CGを駆使した工事の打ち合わせは初めての経験だという。「交錯する配管を頭の中で3次元化するのはかなり大変だ。その点、今回のプロジェクトのように配管を3次元モデルにして検討すると判断しやすくなる」と語る。
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