東日本大震災による電力不足の影響を受けて、「省エネ」性能に加えて、太陽光発電などによる「創エネ」、蓄電池や電気自動車で夜間電力などをため昼間に使う「蓄エネ」の機能を備えた「スマートハウス」の発売が相次いでいる。住宅の断熱性向上や自然光利用に、エネルギー消費を最適化する電気設備を組み合わせた住宅業界の“新製品”には、建築、電気、空調設備、さらにはEV(電気自動車)の高度なコラボレーションが求められている。


 2011年10月1日、大和ハウス工業は家庭用リチウムイオン蓄電池、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、太陽光発電システムを搭載したスマートハウス「スマ・エコ オリジナル」を発売した。

スマートハウス「スマ・エコ オリジナル」(写真:大和ハウス工業)
スマートハウス「スマ・エコ オリジナル」(写真:大和ハウス工業)

 同社の戸建て住宅「xevo」に2.5kWhの家庭用リチウムイオン蓄電池と、独自開発の「D-HEMS」、3.5kWの太陽光発電システムを組み合わせたものだ。

 昼間は太陽光発電システムで発電された電力を使用して余剰電力を電力会社に売電。夜間は、深夜電力を蓄電池に蓄え、蓄えた電力は昼間に優先的にリビングやダイニングなどの照明や家電に使用する。こうした方法で、電力会社からの購入電力を最大2kWh低減させ、売電できる余剰電力を22%増やす。

平常時の電力の流れ(資料:大和ハウス工業)
平常時の電力の流れ(資料:大和ハウス工業)

停電時には蓄電池が非常用電源に

 停電時には自動的に蓄電池からの放電モードに切り替わり、非常用電源として特定の照明や家電に電力を供給する。

 満充電の状態で、夏季は1室の照明、テレビ、冷蔵庫、扇風機を同時使用した場合、約5時間45分の連続運転が可能だ。また冬季は1室の照明、テレビ、冷蔵庫、電気ストーブを同時使用しても約2時間45分連続運転できる。

 昼間、太陽光発電システムが発電している間は充電することにより、長時間電力を供給できる。

停電時の電力の流れ(資料:大和ハウス工業)
停電時の電力の流れ(資料:大和ハウス工業)

 リチウムイオン蓄電池に搭載されている電池セルは、エリーパワーの製品で幅32cm、奥行き55cm、高さ67cmとコンパクトなため、階段室下などに設置できる。

 「D-HEMS」はリチウムイオン蓄電池を制御し、電力をどの時間帯に蓄え、いつ放電するかを、最適にコントロールする。大和ハウス工業がスマートハウスの共通ソフトウエアとして開発した「住宅API」を活用し、モニターとしてアップルのタブレット端末「iPad2」を採用した。

家庭用リチウムイオン蓄電池(左)とD-HEMSのモニターとして採用したiPad2(右)
家庭用リチウムイオン蓄電池(左)とD-HEMSのモニターとして採用したiPad2(右)

 床面積136.23m2の住宅を例にすると、旧省エネ基準(昭和55年基準)による仕様で関西など「IV地域」に建てた場合に年間25万3350円発生する光熱費を、「スマ・エコオリジナル」は26万8550円削減できる。年間光熱費が経費でなく、逆に “利益”になる計算だ。

※関西電力、大阪ガスの料金体系を「xevo」(136.23m2)に適用して試算した結果。2011年9月1日時点。

旧省エネ基準の住宅と「スマ・エコ オリジナル」の光熱費の比較
旧省エネ基準の住宅と「スマ・エコ オリジナル」の光熱費の比較