“タブレット版タフブック”も来年5月に発売予定

 iPadやタブレット端末は小型、軽量という点では現場の最前線で使うのに便利だが、問題は雨やほこり、衝撃・振動といった屋外の悪条件だ。防水のケースなども市販されているが、破れたときなどの心配が残る。

 そこで、パナソニックは雨やほこりに強く、耐衝撃性を備えたタブレット端末、「TOUGH PAD」を2012年5月に発売する予定だ。

 同社がこれまで、屋外の工事現場など、電子機器にとって厳しい条件下で使うために開発・販売してきたパソコン「タフブック」で培った技術を生かして開発したタブレット端末だ。

 タフブックはこれまで、Windows版の様々な機種が開発・販売され、中には小型・軽量のものやタッチパネルを備えたものもあった。しかし、頑丈さを重視して作られているため、2kg以上の質量があり、現場で持ち運びながら使うのは大変だった。

 TOUGH PADの質量は0.97kgに抑えてあるので、かなり軽量化された。タフブックと同様に落下・衝撃、水・ほこりに対して「IP65」準拠の性能を持つ。10.1型、XGA 、薄膜トランジスタ(TFT)カラーの高輝度液晶(約500cd/m2)は屋外でも画面が見やすいように反射防止処理を施し、液晶の明るさは、内蔵の照度センサーによって周囲の明るさに応じた輝度に自動調整される。

2012年5月に発売予定の「TOUGH PAD」(写真:パナソニック)
2012年5月に発売予定の「TOUGH PAD」(写真:パナソニック)

 外形寸法は高さ212.0mm×幅266.3mm×厚さ17mm。OSはAndroid3.2で、中央演算処理装置(CPU)はMarvell デュアルコア(動作周波数:1.2GHz)を採用、メモリーは1GBで、16GBのフラッシュメモリーも搭載している。

 通信機能は無線LAN、Bluetoothを搭載。3G通信モジュール内蔵のタイプもある。このほか、GPSやデジタルコンパス、加速度センサーや500万画素のリアカメラ(オートフォーカス)と200万画素のフロントカメラ(固定焦点)なども搭載し、様々な用途に使える。

 また、CPUにはFIPS140-2 level2相当のセキュリティープロセッサーを採用し、セキュリティー性能にもこだわった。動作温度は-10℃~50℃と、炎天下から極寒の現場まで、幅広く使える。バッテリーは約10時間もつので、ほぼ1日の作業が可能だ。なお、価格はオープン価格となっている。

 建設業向けのシステムがクラウドコンピューティング化されたり、携帯端末版が開発されたりすることで、小型・軽量のタブレット端末やスマートフォンで施工管理や維持管理などの屋外作業がしやすくなり、現場最前線のIT化が一気に進む可能性がある。

 民間企業、自治体の施設管理を行う部門などで、タブレット端末やスマートフォンを導入する例も見られるなど、業務ツールとしての認知度も高まりつつある。

 工事現場で働く技術者は、昼間、現場に出掛けて夜に現場事務所に引き上げてから、工事写真や野帳などをパソコンに取り込み、様々な報告書を作成するというワークフローが一般的だった。これらのシステムがスマートフォンやタブレット端末で使えるようになることで、夜の残業時間がぐっと短縮されるに違いない。


家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。
家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/ツイッターやfacebookでも発言している。