雪に埋まったバルブもピンポイントで発見

 ライフラインを管理する自治体などでは、水道管の破裂などが起こったとき、バルブを閉めて復旧する作業がよく発生する。ありふれた作業のようだが、北国では大変な労力が必要となる。

 その理由は、数メートルにも及ぶ積雪だ。水道管の破裂などが起こると、バルブがあると思われる場所を台帳や図面で突き止め、その付近の雪をかき分けながらバルブを探さなければならないからだ。図面などの精度が悪かったり、付近に目印がなかったりしたときには、なかなかバルブが見つからない。

 こうした日常業務を大幅に効率化するのが、あっとクリエーション(本社・大阪市)が開発した現地調査・施設管理支援GISシステム「カンタンマップ for iPad」だ。

 iPad上に高精度の地図と、施設台帳や管路図などを重ね合わせて、GPSを使って現在の位置を表示するシステムだ。その精度は約1mと高いため、山間部のバルブやマンホールなどが雪に埋もれていてもピンポイントで発見できる。

 地図上には写真も記録できる。「バルブの位置とともに、雪がない状態の写真を登録しておくと、この民家の玄関右側にバルブがあるなということも分かるので、さらに高精度でバルブを掘り出せる」と、あっとクリエーション代表取締役の黒木紀男氏は説明する。

 施設管理などを行う自治体でデモンストレーションすると、職員から「こんなシステムが欲しかった」と言われることも多いという。

「カンタンマップ for iPad」の画面。精密な地図に写真などの情報を登録できる(写真:家入龍太)
「カンタンマップ for iPad」の画面。精密な地図に写真などの情報を登録できる(写真:家入龍太)

 このシステムは、水道管の維持管理業務以外にも、河川の管理業務や下水道のメーター管理、建設コンサルタントの現地調査など、地図情報と施設をひも付けて行う業務に幅広く活用できる。

 グーグルマップに似ているが自社で開発したシステムだ。「グーグルマップだと山間部の地図や航空写真のデータが粗いことがある。このシステムは高精度の地図を背景に張り付けられるので、土木の業務でも活用できる」(黒木氏)。

あっとクリエーション代表取締役の黒木紀男氏(写真:家入龍太)
あっとクリエーション代表取締役の黒木紀男氏(写真:家入龍太)

 通信環境が悪い場所での使用を想定して、地図や台帳などのデータはiPadに内蔵し、あえてスタンドアロンで動くようにした。価格は50万円(税別)で、対応機種はiPad2。現在、次期バージョンとしてクラウド版も開発している。また、自治体からはiPhone版でも使えるようにしてほしいという要望も多い。

 iPhoneには「Face Time」というテレビ電話アプリが無料で公開されており、これを使うと災害時などに現場の状況を対策本部などに”実況中継”できる。このソフトを「カンタンマップ」とともに使うことで、現場最前線との情報共有は格段に行いやすくなる。本部も素早い状況把握と対策を指示することができる。