BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)のソフトで作成した建物の3次元モデルデータを異なるソフト間で交換するためには、ソフトベンダー独自のファイル形式使う方法のほか、多くのソフトが読み書きに対応している共通のデータ形式を通じて交換する方法がある。その代表的なデータ形式が「IFC形式」(Industry Foundation Classes)だ。

 9月7日~11日、兵庫県の神戸ポートアイランドを舞台に開催されたBIMによる仮想コンペ「Build Live Kobe 2011」(主催:IAI日本。以下、BLK2011)では、参加チームは意匠設計や構造設計、各種解析やシミュレーションソフトを使って48時間または96時間という短時間で様々な検討を行った。ここでもIFC形式がソフト間のデータ交換に最も多く使われていた。

Build Live Kobe 2011での作業風景。前田建設工業を中心としたチーム「スカンクワークス」(左)と大林組のチーム「Orange Ark」(写真:家入龍太)
Build Live Kobe 2011での作業風景。前田建設工業を中心としたチーム「スカンクワークス」(左)と大林組のチーム「Orange Ark」(写真:家入龍太)
Build Live Kobe 2011での作業風景。前田建設工業を中心としたチーム「スカンクワークス」(左)と大林組のチーム「Orange Ark」(写真:家入龍太)

スカンクワークスで使ったソフト(緑色)とデータ交換に使ったファイル形式(黄色)。一部、前田建設工業が開発したオリジナルの機能を含む(資料:スカンクワークス)
スカンクワークスで使ったソフト(緑色)とデータ交換に使ったファイル形式(黄色)。一部、前田建設工業が開発したオリジナルの機能を含む(資料:スカンクワークス)

Orange Arkで使ったソフト(青色)とデータ交換に使ったファイル形式(オレンジ色)(資料:Orange Ark)
Orange Arkで使ったソフト(青色)とデータ交換に使ったファイル形式(オレンジ色)(資料:Orange Ark)

ソフトベンダーでIFCの互換性を高める動きが

 IFCは1995年に設立された国際組織「IAI」(International Alliance for Interoperability)によって開発が始まった。当時はまだ、「BIM」という言葉もなかった時代だが、建物の形状や寸法とともに、部材の種類や仕様などの「属性情報」を含んだ「共有プロジェクトモデル」を通じて各種ソフト間をつなぎ、相互運用を可能にする設計や施工の生産性を高めるという狙いは、BIMそのものと言っても過言ではない。

 開発が始まってから10年ほどは建物の各部材の仕様をどのように定義するかなど、規格の開発が中心で、なかなかソフトへの組み込みは進まなかった。ようやくここ数年、意匠設計や、詳細構造設計、構造解析、熱流体解析などのソフト間でのBIMモデルデータ交換に使われるようになってきた。IAIの日本支部であるIAI日本は、設備用のIFC規格を急ピッチで開発している。

共有プロジェクトモデルによって各種ソフト間をつなぐIFC開発の理念(資料:IAI日本)
共有プロジェクトモデルによって各種ソフト間をつなぐIFC開発の理念(資料:IAI日本)

 一方、実用面での課題もあった。IAIがこれまで定義していなかった機器や建材、見積もりなどに使う属性データが規格になかったり、各ソフトのIFC読み書き機能にクセがあったりするなどして、一部のデータがうまく受け渡せない場合があることだ。何もエラーが出ないのに、一部のデータが欠落しているかもしれないという不安があるため、ユーザーは積極的にIFCを使いづらかった。

 ところが最近、ソフトベンダー同士の連携によるデータ交換精度の改良、IFCの書き出し機能を「オープンソース」として公開し、ユーザーが自由にカスタマイズできるようにする動きが出てきた。これらの取り組みは、IFCの実用性を高めることにつながる。