国内外の官僚教育にも活用

 「P2Mは発表直後から経済産業省の官僚教育に導入されたほか、フランス、ウクライナ、ロシア、フィリピンなどでも官僚教育に導入され、高い評価を受けている」と日本プロジェクトマネジメント協会理事長の光藤昭男氏は語る。

 日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が導入しているほか、民間企業でも、1兆円を超えるエネルギー関連プロジェクトの全体マネジメントや、委託額が1000億円近いメディカルセンターのPFI案件の実施にP2Mを活用した事例がある。製薬、IT、食品などの幅広い業種で、製品開発や研究開発、経営改革、人材育成などの課題解決に用いられている。

 東日本大震災で被災した地域の復興や、福島第一原発の事故処理も、複雑で長期にわたる課題だ。特に原発の事故処理は100年、200年単位の超長期のプロジェクトだ。これらの課題解決にもP2Mの役割が期待されている。

 「これまでP2Mは国内外で高い評価を受けてきたものの、認知度が低い面もあった。ところが最近は超大手メーカーなどからも問い合わせを受けることが増えてきた」と光藤氏は言う。

 2011年9月8日~9日に東京・江戸川区で開催された「PMシンポジウム2011」では、過去最大の1400人が参加。P2Mを含めたプロジェクトマネジメントへの関心の高まりを裏付けた。

9月8日~9日に開催された「PMシンポジウム2011」。1400人が参加し、P2Mをテーマとしたセッションも設けられた(写真:日本プロジェクトマネジメント協会)

日本が編み出したプロジェクトマネジメント手法「P2M」の解説書を掲げる日本プロジェクトマネジメント協会の光藤昭男理事長(写真:家入龍太)

「P2M」解説書の中身(資料:日本プロジェクトマネジメント協会、写真:家入龍太)

 P2Mを実践するためのスキルを認定する資格制度として、日本プロジェクトマネジメント協会では4段階のプロジェクトマネジメント資格制度を設けている。基礎レベルの「PMC(プロジェクトマネジメント・コーディネーター)」、中級レベルの「PMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)」、上級レベルの「PMR(プロジェクトマネジャー・レジスタード)」、そして最高レベルの「PMA(プログラムマネジメント・アーキテクト)」だ。

 最近、創設されたPMCは1400人弱、PMSは4500人弱の資格取得者がいる。PMRは現在61人、そしてPMAはまだいない。資格取得者のうち建設会社に所属する人は10%程度だ。エンジニアリング会社や設計コンサルタントなどの建設技術者を含めると若干増えるという。

 また、P2Mを実践するITツールとしても決定的なものはない。 「プロジェクトマネジメントのツールとしては『Primavera』や『MS Project』、『Artemis』などの具体的なものがある。しかし、P2Mの『プログラム』を管理するためのツールとしては、具体的なものはない」と光藤氏は言う。