VBAで単純作業を半自動化

 検査野帳を作成する際、これまでは柱や梁の位置や部材符号が描かれた「伏図」や、柱や梁の鉄筋種別や本数などを記入した「断面リスト」などのCAD図面から必要な部分を手作業でコピー・アンド・ペーストしながら、CAD上で必要な情報をまとめていた。

 この煩雑な作業をパソコンで半自動化したのは、「VBA(Visual Basic for Applications )」というプログラミング言語だ。一連の作業を1回のボタン操作で行ったり、他のソフトのデータを読み書きしたりといった特定の操作手順のカスタマイズを実現するため、各ソフトに装備されている。

 例えば、AutoCADで開いた伏図上で範囲を指定し、通り芯の符号や座標、部材のそばに記入された部材符号をExcelに取り込んだり、部材符号をそれぞれの柱や梁に対応させたりといった処理は、VBAで自動化している。

 また、表形式になっている断面リストは、Excelに取り込んだ後、縦横の枠を自動認識して一つずつ独立した図に分解。表の項目などの情報をそれぞれに付加することで、バラバラになってもどの柱、梁の情報なのかが分かるようにした。この処理もVBAで行っている。

AutoCADの図面(背景)から、通り芯の情報をExcel上に取り出す(右下)(資料:竹中工務店)

AutoCADの伏図をExcelで処理するためにWMF形式で切り取る(資料:竹中工務店)

断面リストを分解し、単独で配筋や部材に関する情報が分かるようにまとめる(資料:竹中工務店)

 最後に伏図と部材符号、断面リストをレイアウトした検査野帳を作成するために、プレゼンテーションソフトのPowerPointを使った。野帳の中央に柱の位置を示した伏図を配置し、その周囲に断面リストを配置。対応する柱と断面リストを引き出し線でつないだ。断面リスト同士が重なる場合には、位置をずらすこともできる。これらの作業もVBAで自動化した。AutoCADやExcelはともかく、PowerPointでVBAを活用した例はかなり珍しいだろう。

 VBAを活用するメリットは、手作業による労力を削減し作業のスピードアップを図るとともに、転記ミスなどのヒューマンエラーを防止できることも大きい。

 ただ、検査野帳のデータなどは、だれもが簡単に作成できるわけではない。VBAを駆使して各ソフトを連携させるという手順にはある程度の慣れが必要なため、本店に配置された内勤の専任技術者がこのシステムを使って作成している。

 また、現場事務所では、検査野帳作成の前にこのデータを最新の構造図と照合しながらチェックし、設計変更などがあった部分などの断面リストを修正している。この作業は全自動とはいかないが、データ更新などシステムの運用のすべてを本店まかせにするのではなく、現場の技術者も参画した協調型システムであるため、実務に根付きやすいという点では効果的だ。