トンネルや空港の維持管理にも活用

 マンホールの浮き上がりや路面の変状を調べる場合、これまではトータルステーションなどの測量機を使って、1カ所ずつ「点」として計測するのが一般的だった。これに対してMMSは計測作業が早いだけでなく点の集合体である「面」的な情報として記録できる。そのため、路面の陥没などの分布を詳細に把握でき、必要に応じてパソコン上で任意の場所の位置や距離などを3次元的に測ることが可能だ。

 MMSを使った計測作業の料金は、1日当たり約100万円だ。アイサンテクノロジーは今回、計測した点群データについては業務で納品するほか、必要とする団体などに無償で提供する。「道路や町の復旧・復興や研究に役立ててほしい。道路脇に座礁した漁船やがれきの点群データも、被害状況を正確に後世に残すという意味があるのではないか」と佐藤氏は言う。

 今回、MMSで計測したのは石巻市の三陸道の無料区間と牡鹿コバルトラインと市街地、仙台市の太白区役所周辺、同区緑が丘4丁目、白石市の市街地、そして仙台空港周辺や東北自動車道の一部などだ。

 MMSが地震の被災地に向かったのは今回が初めてではない。2004年10月に発生した新潟県中越地震では、翌2005年11月に旧山古志村(現新潟県長岡市)などでがけ崩れなどの被害状況を計測した。

 被災時だけでなく、MMSによる計測を平常時から行っておくことにより、構造物の経時的変化などを簡単に求めることができる。新潟県ではトンネルの維持管理を行う資料として平常時に約60本のトンネル内部をMMSで計測した実績がある。あるトンネルでは異なる時期に計測した点群データを比較することにより、内壁の変位を求めた。その結果、トンネル内壁の変位を面的に把握することができた。

 また、2010年秋に開業した羽田空港D滑走路でも定期的にMMSによる計測を行い、地盤沈下の経時的変化を把握しながら維持管理に役立てている。

あるトンネルで異なる時期にMMSで計測したデータを比較し、内壁の変位を求めた例。赤い部分はトンネルの内側、青い部分は外側に変位したことを示す(写真:アイサンテクノロジー)