今回の建設IT注目情報 ~新菱冷熱工業「S-CADの現場活用」~

 空調・電気設備の設計では、まだ2次元CADが主役で、3次元CADの活用はあまり進んでいません。ところが新菱冷熱工業では、3次元CADで施工図を作成するのは当たり前。さらに、3次元の設計データを工事現場で活用するという、新しい段階に入りつつあります。

 3月9日、東京・芝公園で開催された「三団体交流会」(主催:関東空調工業会、関東配管工事業協同組合、関東甲信越保温保冷工業協会)で、新菱冷熱工業の谷内秀敬さんと酒本晋太郎さんが「設備業界のIT化とその将来像」と題して講演し、現場での最新の取り組み状況を紹介しました。

 IT系の講演会と言えば、講師が演台に張り付いてプロジェクターの映像を見ながら話を進めていくパターンが一般的ですが、この講演は工事現場の雰囲気を会場で感じられるようなダイナミックなものでした。

 演台の脇には、
 
ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
 
トータルステーション
 
を設置し、「墨出し作業」を実演したのです。墨出しとは、図面に描かれた部材の取り付け位置などを、床や壁などの対応する場所に表示することです。

 同社では、シスプロが販売する設備設計用3次元CAD「DesignDraft」を業務用にカスタマイズした「S-CAD」というソフトを使っています。

 実演では会場のメルパルク東京のホールをS-CADで3次元モデル化し、天井面に墨出しする点を指定しました。点のデータをスマートフォンに読み込み、画面上で選んでいくと、トータルステーションが選んだ点の方向に向いてはレーザー光を照射する、という動作を繰り返しました。

 その手際のよさに、天井を見上げた受講者からどよめきが上がっていました。

 このほか、壁や天井の裏に隠れた空調ダクトや配管などの位置を“推定”し、建設当時の施工手順を仮想的に再現したCGアニメーションも上映しました。

S-CADとスマートフォン、トータルステーションを組み合わせた墨出しシステムの構成図(上)と、墨出し作業の実演(下)(資料:新菱冷熱工業、写真:家入龍太)

講演会の会場風景(左)。壁や天井裏の設備機器を“推定”してS-CADで3次元モデル化し、CGアニメーションで施工手順を再現した例(右)(写真:家入龍太、資料:新菱冷熱工業)

熱弁を振るう新菱冷熱工業第一エンジニアリング部技術五部企画課長の谷内秀敬さん(左)と同社中央研究所主査の酒本晋太郎さん(右)(写真:家入龍太)

 3月11日に東北・三陸沖を震源とする「東北地方太平洋沖地震」が発生し、多大な被害が発生しました。たまたま、講演でも地震時の対策にS-CADを使う事例が紹介されました。