今回の建設IT注目情報 ~NTT、NEC、OKI、富士通、三菱電機「ICTを用いた環境負荷低減実証実験」~

 住宅内のエアコンや照明などの設備を家庭内LANで接続し、外出先から携帯電話などでスイッチのオンオフなどを行えるサービスが複数の企業から提供されています。照明の消し忘れなどを防ぎ、省エネを実践するのには便利ですね。

 一方、「インターフェース」とよばれる通信・制御方式が各社によって異なるため、こうした遠隔制御や監視などのサービスを利用するに際しては、すべての機器を同じメーカーの製品で統一する必要があったり、前から持っている家電製品はこのシステムで制御できなかったりという使い勝手の悪さもありました。

 メーカー間で機器の通信や制御方法を標準化すれば、こうした使い勝手の悪さは解消されます。標準化によって設備の共通化・低廉化が図りやすくなるため、新規参入が容易になります。そうなれば、企業間競争によりサービスの提供価格も下がりそうです。サービスが安価で提供されることによって、消費者の省エネ行動が普及すれば、環境負荷も下がります。

 そこで、関連仕様の標準化を進めるため、大手通信・家電メーカー5社が「ICTを用いた環境負荷低減」の実証実験を行っています。

 参加企業はNTT、NEC、OKI、富士通、三菱電機の5社。学校や研究施設、ガソリンスタンド、住宅など全国数カ所の施設に取り付けたエアコンやテレビ、パソコンなどを各施設のLANに接続。さらに「ゲートウェイ」という装置からNGN(次世代ネットワーク)やフレッツ網というネットワークを通じて
 
共通のサーバーに接続
 
し、全国各地の機器の動作状況を確認したり、機器を遠隔操作したりする壮大な実験です。

実証実験でネットワーク接続した施設と関連する管理システム。共通の「中間プラットフォーム提供サーバー」で各動作状況の集約と遠隔操作を行う(資料:NTT)

家庭やオフィスのLANに接続した様々な機器を、ゲートウェイを介して広域ネットワークに接続する。ゲートウェイの外側にある通信方式の標準規格化を目指している(資料:NTT)

 家電や設備をゲートウェイに接続するインターフェースとしては、パソコンは「IP」、エアコンは「ECHONET」、設備は「BACnet」など、様々な方式があります。

 実験の主眼は、各機器や設備のインターフェースはそのままに、ゲートウェイから共通サーバーまでの通信方式を標準化することにあります。これが実現すると、インターフェースの異なる機器をネット上で一括管理する「クラウドコンピューティング・サービス」が可能になります。

 そうなると、iPadやアンドロイド端末で離れた場所のオフィスにある様々な機器の省エネ管理を行ったり、留守宅をネットで監視するサービスなどを提供する事業者も低コストで参入できたりと、さらに便利になります。

インターフェースを標準化した後のイメージ。様々な顧客を対象とする省エネサービス会社が低コストで参入できる(資料:NTT)

 3月2日、この実験がNTT武蔵野研究開発センタで一般公開されました。実験施設には住宅やオフィスビルの内部を再現した部屋や太陽光発電システムや燃料電池などが設けられ、各機器がLANで接続されています。

 ネットワークを介した操作でテレビや照明、パソコンのスイッチを切ったり、武蔵野市の実験施設から石川県能美市に設けた実験住宅のカーテンを開けたりするデモンストレーションも行いました。

実証実験の一般公開を行ったNTT武蔵野研究開発センタ(写真:家入龍太)

 今回の実証実験に参加した5社は、インターフェースの標準化とともに、省エネにかかわる様々な実験を行っています。