今回の建設IT注目情報 ~JIPテクノサイエンス「橋梁モニタリングシステム」~

 「ちょっと揺れ方がおかしい」、「何か音が変だ」───構造物や機械設備の異常を発見するときは、人間の経験や勘が大きな役割を果たします。

 しかし、人間が四六時中、現場に張り付いてチェックすることは非現実的ですね。そこで建設ソフトベンダーのJIPテクノサイエンス
 
無線センサー
 
でネットワークを組み、橋の異常を監視する「橋梁モニタリングシステム」を開発。1月28日に大阪市淀川区の同社大阪テクノセンタで開催した「第44回鋼橋生産システム研究会」で発表しました。

 無線センサーには、加速度や温度、湿度、光に反応するセンサーのほか、CPU(中央演算装置)も搭載しているため、センサー自身が測定した加速度波形データを「高速フーリエ変換(FFT)」などで分析したり、過去の固有周期と比較したりできます。

 また「自己組織的ネットワーク」という機能を持っているため、無線センサーを構造物上に設置すると他の無線センサーとの間で自動的にネットワークを構築し、バケツリレー方式で1カ所にデータを転送することが可能です。

各種センサーやCPUを搭載した無線センサー(左)と講演するJIPテクノサイエンス取締役の家入正隆さん(写真:家入龍太)

バケツリレー方式でデータを転送する自己組織的ネットワークのイメージ。「×印」の経路が遮断されても、赤い破線のように新しい経路を自動的に見つけてネットワークを維持する(資料:JIPテクノサイエンス)

 無線センサーを橋のいろいろなところに取り付けておくと、振動モードや固有周期の変化などで異常を感知し、管理者に知らせることができるのです。

 このシステムについて講演したJIPテクノサイエンス取締役の家入正隆さんによると、この無線センサーはもともとインテルが軍事用に開発したものです。

 これまで人間の経験と勘で発見していた構造物の揺れ方や音などの異常を、加速度や周期の異常に置き換えることにより、無線センサーが発見できるようにというわけですね。

 無線センサーを使うことのメリットは配線やデータロガーなどの機器が不要なため、従来の有線式の計測システムに比べて安く、短い時間で設置できることです。

 橋梁モニタリングシステムは今年の春に発売予定です。価格は基地局1台と無線センサー3台分のハード機器で60万円(税別)、無線通信の制御や無線センサー用のソフトウエア一式で60万円(同)を予定しています。

無線センサーで計測した岩手県の槇木沢橋(上)とアーチ橋の振動モードの例(下)(写真、資料:JIPテクノサイエンス)

第44回鋼橋生産システム研究会の会場(左)。私も「ITで実現する鋼構造業界の新成長戦略」というテーマで講演。2人の「イエイリ」の共演が実現した(下)(左の写真:家入龍太、右の写真:JIPテクノサイエンス)

 このシステムは 鉄塔や煙突の劣化状況や風との共振など、橋以外の構造物でも幅広く活用できます。さらにエレベーターの運転や機械の故障発見にも役立ちそうです。