今回の建設IT注目情報 ~関西電力など「X線による電線劣化検出システム」

 構造物や設備を良好な状態に維持管理するためには、人間同様に“健康診断”が欠かせません。その手段には目視検査や赤外線カメラによる撮影、ハンマーでの打撃などいろいろありますが、検査対象物の周囲に足場がなかったりすると、困ることがありますね。

 高い鉄塔の間に張り渡された架空送電線は、最も検査が難しい設備の一つでしょう。ところが関西電力はジェイ・パワーシステムズ、九州電技開発と共同で、送電線の健康状態を高精度で検査できる世界初の装置を開発しました。

ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
 
電線をX線撮影
 
して、腐食状態を検出するのです。

 この装置にはX線発生源を搭載しており、電線にぶら下がって下から上に向けてX線を照射しながら電線上を移動できるようになっています。そのX線画像を処理することで、内部の腐食状態が分かるのです。

X線による電線劣化検出システム(資料:関西電力)

 架空送電線は中心に鋼線があり、それを取り巻くようにアルミ線が配置されています。電線に塩分や水分が付着すると、アルミ線の部分が腐食することがあります。

 この内部腐食が進むと、腐食生成物が発生して電線が膨れてきます。これまでは地上から、あるいは電線に乗って目視で点検していたので、電線が太くなってからでないと腐食していることが分かりませんでした。

 X線撮影装置を開発したことで、電線が太くなる前の初期の腐食を検出でき、腐食の程度も分かるようになりました。そのため、より計画的な設備更新が可能になります。

送電線の腐食メカニズム(資料:関西電力)

 人間の場合は、X線写真を医師が見て異状の有無を判断します。では、送電線の場合はどのような点に着目して画像を見るのでしょうか。