地理空間情報とは、位置情報(時刻情報を含む)に関連づけられた様々な情報のことである。地理空間情報活用推進基本法(平成19年5月30日法律第63号)の第2号第1項には、 「空間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む)」と定義されている。

 2010年9月、宇宙航空研究開発機構は準天頂衛星初号機「みちびき」の打ち上げに成功した。米国が運用するGPSに対して、日本地域向けの補完を行うためのプロジェクトだ。1機の衛星が日本の真上に滞在できる時間は7~9時間程度のため、準天頂衛星が3機以上の体制になると、日本の上空には常に1機の準天頂衛星が滞在できることになり、現在よりも正確な位置情報を取得できるようになる。地理空間情報活用推進基本法に基づいて政府が策定した「地理空間情報活用推進基本計画」の一つである。

 地理空間情報の活用が進めば、GIS(地理情報システム)*やGPS(衛星測位)を、様々な情報と位置や時刻を結びつけて、行動の判断材料となる的確な情報を提供することができる。

* ここでいうGIS(地理情報システム)とは、デジタル化された地理空間情報を電子地図上で一体的に処理して視覚的な表現や高度な分析を行う情報システムのこと指す。

 例えば、国土交通省は、「地理空間情報プラットフォーム」の試作版を公開している。今まで部局や施策ごと個別に公開してきた情報をまとめて電子地図上で見ることができるようにしたものだ。

 地理空間情報プラットフォームの特徴としては以下のとおりである。

  • 地図は日本全国から街区レベルまで自由な縮尺
  • 異なる情報を地図上で重ねあわせることが可能
  • 地図上のアイコンを選択することで情報の概要を表示し、さらに詳細な情報へリンクが可能
  • 検索範囲を指定して、キーワード検索が可能
  • 新規の情報登録が簡単
まだ試作版のため、実運用できる域に達してはいないが、登録データが拡充すれば、様々な情報を重ねあわせることにより、地域の情報を一目で見ることができるようになるだろう。

 現在の地理空間情報プラットフォームには、国土地盤情報検索サイト「KuniJiban」と同様にボーリングデータ(土質調査)の閲覧可能な場所を地図上で探すことができるため、調査や工事現場付近の土質情報を得ることにより想定することが可能だ。また、浸水想定範囲や電子基準点、道路基準点なども地図上から探すことができる。

情報化施工で活用、将来は建設現場から測量機器が消える?

 建設現場でも建設ICTとして、地理空間情報を用いたMC(マシンコントロール)やMG(マシンガイダンス)などの情報化施工で導入が進んでいる。MCにより、施工のための測量や丁張設置、さらには施工中の品質管理や施工後の出来形管理が省略でき、MCではバックホウなどの操作をオペレータにガイドすることが可能となっている。

 3次元空間の高度な地理空間情報を取得することにより、今後さらなる高精度な情報化施工が広がり、建設現場の省力化につながる。

 将来的には、地理空間情報において、複数の情報が地図上に仮想的に一元化されるだろう。衛星測位技術がさらに高度化されれば、iPhoneなどのカメラ付きスマートフォン端末で、撮影した景色に様々な情報、例えば、肉眼では確認できない地下埋設物の情報や各種台帳、3次元設計図面などを重ねあわせることも可能だ。さらには、施工物の3次元スキャン化などの技術により、近い将来、建設現場からトランシットやレベルといった測量機器が消える日が来るかもしれない。

執筆:東建IT研究会
「建設会社の利益に結びつくITの研究及び支援」を目的に、東京建設業協会内に2004年5月14日に設立した研究会。月1回の定例会議で、講習会の企画・開催、意見交換会、調査・研究、教育プログラム策定などの活動を行っている。
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