今回の建設IT注目情報 ~前田建設工業「セルラーデータシステム」~

 ソフトウエアに求められる機能や扱うデータは、時代とともに変わっていきます。コンピューターの処理手順に従ってコマンドを並べてプログラミングする方法だと、データの種類が増えたときなどに改造するのが大変でした。

 前田建設工業は、従来のプログラミング作業の常識を打ち破る「セルラーデータシステム」(以下、CDS)というソフトウエア開発支援システムを実用化しています。その中身について話を聞いてきました。

 システムの仕組みは、Windowsなどの基本ソフト(OS)上で「CDSエンジン」という情報処理エンジンがあり、約200種類の関数を式で組み合わせてデータ処理機能を構築。それにユーザーインターフェースという、入出力用の画面などを取り付けてソフトウエアとして機能するようにします。

 その特徴は、データの統合や検索、追加などに柔軟に対応できることです。従来のデータベースシステムは、新しいデータ項目を追加しようとするとシステム全体を修正する必要があり、作業が大変でした。

 一方、CDSは、ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
 
一部の式を書き換える
 
だけで、システム全体を変更できるのです。

CDSの構成図(資料:前田建設工業)

 CDSは非常に応用範囲の広いものです。例えば、表形式のデータを扱う場合は、一つの表を1行の式で表すことで、異なる形式のデータを統合したり、人間の思考に合わせて検索したりできます。また、ツリー構造のデータや過去の履歴なども柔軟に記述できるので、見積もりや部材構成の管理などに使えます。

 前田建設工業では、CDSを活用して本支店への広報情報の配信、PDFデータのファイリング、全社資産情報の一元管理、工事写真のファイリング、建築物件の維持管理など、様々な社内用システムを構築しています。

 その一つが、「M-Bids」というシステムです。国土交通省の地方整備局がウェブサイトで公開している入札結果を、統合して検索できます。

 各地整の入札結果は、表の形式がバラバラで、同じ地整でも年によって形式が異なることがあります。従来は、人の手で表計算ソフトのデータをコピー・アンド・ペーストすることにより、一つの表にまとめ直していました。その膨大な作業が、M-Bidsによって不要になったのです。

国土交通省の地方整備局が表形式で発表している入札結果情報。同じ地整でも表の形式が毎年違う場合もある(資料:前田建設工業)

各地整の入札結果情報をシステムに入力し、一つの表に統合するのも簡単。CDSで作成したソフトはサーバー上で動作させ、ウェブブラウザーで操作する「クラウドコンピューティング」で使うのが基本だ(資料:前田建設工業)

CDSによる表形式のデータ表記・演算式や表の統合イメージ(資料:前田建設工業)

 実用システムが次々と開発されているCDSですが、その裏には驚くべき事実があったのです。