RFIDとは"Radio Frequency Identification"の略。IDを持つ情報媒体(RFタグ)の情報を無線で認識できるようにして、個人情報や製品情報などを認証する技術全般のこと。

 RFIDでは、リーダー/ライターを使用して、RFタグの電波や電磁波を送受信し、情報の読み書きを行う。一般的には、読みとられた情報はパソコンやサーバへ送られてデータ処理される。これらのRFタグ、リーダー/ライター、コンピュータ等を一括してRFIDシステムという。

 「RFタグ」とは、内蔵するICチップのメモリーに、誘導電磁界または電波によって書き込まれたデータを保持し、非接触で読み書きができる情報媒体のこと。RFタグは電子タグ、ICタグ、非接触タグなど多様な呼称がある。日本の省庁などの機関では電子タグと呼び、経済産業省と総務省が共同で公表した「電子タグに関するプライバシー保護ガイドライン」では、「ICチップとアンテナにより構成され、物品等に装着されるものであって、その中に当該物品等の識別情報その他の情報を記録し、電波を利用することによりこれらの情報の読み取りまたは書き込みができるものをいう」と定義している。

 ICチップのメモリー容量はコード番号のみを管理するものは16バイト、様々な業務に用いるものは9000バイトなど多種多様であるが高容量化の傾向にある。RFタグで用いる通信の周波数には、電磁誘導方式で長波帯(135kHz)と短波帯(13.56MHz)などがあり、電波方式でUHF帯(433MHz、952-856MHz)、マイクロ波帯(2.45GHz)などがある。なお、RFタグはカードに内蔵したり、携帯電話に装備したり、シールとして製品に張るなどして用いられている。

 RIFDの特徴としては、

(1)離れた場所から(非接触で)読み取りと書き込みができ、書き替えや追記も可能である
(2)タグが小型で製品への張り付けに適しており、製品一つひとつに個別にタグを張ることにより製品の個別管理ができる
(3)複数のRFタグを一括で読み取ることができる
(4)耐環境性に優れており水や油にも強く、汚れやほこりなどの影響を受けにくい

などが挙げられる。

 RFIDが身近に使われている例としては、交通ICカードがある。JR東日本の「Suica」、JR西日本の「ICOCA」、首都圏の電車やバスで利用できる「PASMO」はソニーが開発したICチップが用いられている。あらかじめカードに現金のチャージを行い、乗車時に自動改札機にカードをかざして残金の確認を行い、降車時には同様に自動改札機にカードをかざして料金の引き落としを瞬時に行う。乗車履歴の記録を保持しているので、後から一括して記録の印刷も可能である。

 そのほかにも、RFIDの導入は様々な分野に拡大している。流通業務では、メーカーが商品を出荷する段階で商品やケースにRFタグを張りつけて出荷することにより、物流センターでの入出荷管理が容易になり、小売業者では商品の単品管理が可能となり効率的な在庫管理が実現できる。食品のトレーサビリティの取り組みにもRFIDが用いられている。農作物や食肉にRFタグを張りつけて生産履歴を蓄積し、販売経路を記録して消費者に渡る段階でそれらの情報が確認できる用途に用いられている。

 建設業界におけるRFIDの導入事例も増えつつある。よく用いられる事例として工事現場における作業員の入退管理システムがある。仕組みとしてはまずタグ内蔵のカードを作業員ごとに発行する。カード発行時に作業員のコード、氏名、性別、住所、取得免許などを記録し、工事現場の出入り口にて作業員がその都度、カードをかざして日々の入退場を記録する。建設会社では作業員コードを鍵にして日々の入退記録をコンピュータに吸い上げ入退管理はもとより各種労務安全管理業務の効率化を図るためのシステムを構築し運用している。

 この作業員の入退管理を重機車輌の稼働管理に適用した例もある。車輌のバンパーにRFタグを取り付け、車輌の出入り口を特定してデータ収集のアンテナを設置し、車輌がその場を通過することによって各車輌の出入り回数を把握し、コンピュータ側の処理によって各車輌の稼働を管理し、必要な土量を算出するシステムである。

 また、最近では工場であらかじめ生産するコンクリート部材にその性能などを記録したRFタグを埋め込むことも行われている。これにより、工事現場での部材の組み立て時に、部材内のRFタグを情報端末で読み取って、所定の場所にその部材が設置されているかを効率よく確認できるようになる。建物竣工後のリフォーム段階の際にも、各部材内のRFタグによる製造情報は有効に活用できる。

 このようにRFIDは建設業においても有効なツールとして今後とも活用が進むことが予想される。RFIDを一般競争入札の技術提案の中に活用することも有効であると考えられるので、今後とも注目する必要がある。

執筆:東建IT研究会
「建設会社の利益に結びつくITの研究及び支援」を目的に、東京建設業協会内に2004年5月14日に設立した研究会。月1回の定例会議で、講習会の企画・開催、意見交換会、調査・研究、教育プログラム策定などの活動を行っている。
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