情報化施工とは、生産性および品質の向上を図るために、施工現場で建設ICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)を活用することをいう。情報化施工のメリットとしては、施工の効率化・合理化による、安全性や品質の向上、工期短縮などが挙げられる。

 情報化施工とは、国土交通省「情報化施工ホームページ」のコンセプトによると、

  • 建設事業の調査・設計、積算・発注、施工、維持管理という実施プロセスの中から施工に注目し、
  • 各プロセスから得られる施工に関連する電子情報や各作業から受け渡される電子情報を活用し、
  • 建設機械と電子機器、計測機器の組み合わせによる連動制御あるいはそれら機器のネットワーク化による一元的な施工管理など、個別作業の横断的な連携、施工管理の情報化を行う
ことによって、施工全体として生産性および品質の向上を図るシステムである。

 また、情報化施工はCALS/ECに密接に関連した施策であり、CALS/ECの工事施工フェーズの一部となっている(下図)。

建設ICTとCALS/ECの範囲について(資料:国土交通省中部地方整備局建設ICT導入研究会「建設ICTざっくりシリーズ」より)
建設ICTとCALS/ECの範囲について(資料:国土交通省中部地方整備局建設ICT導入研究会「建設ICTざっくりシリーズ」より)

 情報化施工の範囲は、計測施工や機械化施工、建設ロボットを含めて工事施工全般である。また、その後工程である出来形管理・維持管理等の効率化にも配慮したものである。 情報化施工を構成する技術的な要素としては、基本になる技術標準・データ標準等に則った、(1)遠隔操作技術、(2)観測・計測技術、(3)ロボット技術、(4)情報収集技術、(5)情報蓄積・通信技術などがある。

情報化施工の範囲(資料:国土交通省「情報化施工ホームページ」より)
情報化施工の範囲(資料:国土交通省「情報化施工ホームページ」より)

 これらの技術を統合するソフト/ハードには、GPS、ナビゲーションシステム、インターネット、PHS、パソコン、無線LAN、各種センサーなど、IT情報技術を応用したものが多い。従来の工法をベースに、これらのツールが様々な工事に活用される。

情報化施工に利用する技術の紹介

(1)トータルステーション(TS:Total Station)
 TS(トータルステーション)とは測量の基本要素である角度と距離を同時に計測する測量機器のこと。角度を計測するセオドライト(トランシット)と距離を計測する測量儀(光波距離計)を組み合わせての観測により得られた角度と距離から、新点の平面的な位置を求めるもの。、計測データを通信により受渡しする「自動追尾型」の場合、一人でも測量できるため作業効率がさらに上がる。

(2)GNSS(Global Navigation Satellite System)
 GPS(Global Positioning System)やGLONASS(Global Navigation Satellite System)など衛星を利用した測位手法のこと。情報化施工では、既知点のGNSSデータと移動しながら取得したGNSS データを、実時間(リアルタイム)で測位するRTK-GNSSという手法をよく利用する。

(3)レーザースキャナー
 レーザー光線によって距離を計測し、面のデータを点の座標の集まりで取得する機器のこと。

(4)3次元デジタルデータ(情報化施工のソフト)の活用
 3次元CADデータを活用して、測量計算機能や、土量計算機能などを一体化させることで、施工前現場の状況(現況の座標や形状)と設計図面データを重ね合わせることができる。それにより、工期の短縮(コスト削減)と品質の高い施工が実現し、受注額が下がった今の時代でも品質で信頼を確保し、高い評価を得ることができる。

 情報化施工は、施工の安全性や品質の向上、工期短縮によって発注者の信頼度を高め、省力化→生産性向上→コスト縮減にもつながるシステムとなる。情報化技術を建設施工に適用し、多様な情報の活用を図ることによって、施工の合理化が図れる。また、土木の現場では、3次元設計モデルデータを活用し、建設機械や計測機器との連携を図って施工および管理を効率化し、かつ品質を高める施工技術が可能となる。総合評価落札方式が拡大の中、技術提案による活用事例も多くあると思われる。

今後の課題

 情報化施工の効果をより高めるには、現場管理が非常に重要となる。そこで東建IT研究会では、技術者の負担軽減を考えて、「建設現場における情報化施工」をテーマに取り上げ、建設業界で特に現場技術者活用する技術要素として、携帯電話・Webカメラ・PDA・ICタグ・GPS・GIS・タブレット・タッチパネル・デジタルカメラ・レーザースキャナー等を便利に活用できる様に、各社の事例をまとめて紹介する予定だ。

執筆:東建IT研究会
「建設会社の利益に結びつくITの研究及び支援」を目的に、東京建設業協会内に2004年5月14日に設立した研究会。月1回の定例会議で、講習会の企画・開催、意見交換会、調査・研究、教育プログラム策定などの活動を行っている。
▼東建IT研究会のウェブサイト
http://token.or.jp/itlab/