初出:「日経コンストラクション」2008年5月9日号
* 記事は原則執筆時の情報に基づいています。初出から2年が経過していますが、現在でも電子納品の基礎知識についての情報ニーズが高いことから、ケンプラッツで再掲載します(全12回・隔週木曜掲載予定)


 現在、ほぼすべての都道府県が電子納品を実施しており、今後は市町村にも広まっていく見込みだ。自治体は通常、独自の電子納品要領などを定めているが、その内容は基本的に国土交通省の要領や基準に準拠している。しかし、一部の自治体では独自のルールを定めている場合があるので注意が必要だ。

 自治体の独自ルールによっては、工事を始める段階から対応しておかなくてはならないケースもある。その一つが、写真の解像度だ。

 いったん撮影した写真のデータは、原則として手を加えてはいけない。後から、画像編集ソフトなどで解像度を変更することができないので、撮影時から規定に合うようにデジタルカメラを設定しておく必要がある。

 自治体における写真ファイルの規定の例を下に示す。国交省では有効画素数を100万画素程度とし、ファイルの大きさは特に定めていない。一方、自治体によっては画素数やファイルの大きさに上限を設けているケースもある。

 画素数とは、写真を構成する点(ピクセル)の数のことだ。例えば、解像度が1280×1024ならば、画素数はほぼ130万となる。最近のデジタルカメラは画素数が多いので、その性能をフルに使うと解像度が高すぎる。

●写真ファイルの大きさなどを規定している自治体の例
(注)横と縦のピクセル数が1280×1024の場合で約130万画素
(注)横と縦のピクセル数が1280×1024の場合で約130万画素

 同じ解像度の写真でも、圧縮率によってファイルの大きさが異なる。圧縮率を決めるのが、デジタルカメラの画質の設定だ。デジタルカメラでは通常、撮影モードの設定で「ファイン」や「ノーマル」などの画質を選択することができる。

 ファイルサイズが大きすぎる場合には、画質を落とせば小さくできる。使用するデジタルカメラで試しに撮影し、ファイルサイズが規定から外れていないかどうかを着工前にチェックしておこう。

国交省と異なるCADデータ形式

 自治体によっては、オリジナルファイルの形式を指定している場合もある。国交省の場合、ファイル形式は請負者と発注者の間で協議して決めると規定しているが、広島県などでは原則としてワード、エクセル、JPEG、TIFF、PDFに制限している。これら以外のファイル形式となるソフトを使っている場合には、その対応について発注者と事前に協議しておく必要がある。 CADデータの納品形式が国交省と異なる自治体もある。電子納品用のファイル形式であるSXFには、国際規格に準拠したP21と、日本独自の規格であるSFCの2種類がある。国交省や多くの自治体ではP21形式のSXFで納品するように定めているが、広島県と愛媛県では原則としてSFC形式のSXFで納品すると規定している。CADデータを変換する際に、SFCを指定する必要がある。

監督員の承諾を得れば、写真の編集が認められる自治体もある。栃木県のデジタル写真補正申請書の一例 (資料:栃木県)
監督員の承諾を得れば、写真の編集が認められる自治体もある。栃木県のデジタル写真補正申請書の一例 (資料:栃木県)

 SXFへの対応を認証するOCF検定に合格したCADソフトならば、P21とSFCの両方の形式に対応しているので問題はない。

ファイルの命名に独自規則も

 そのほか、ファイル名の付け方に独自のルールを定めている自治体もある。国交省の場合、「その他フォルダー」に収容するファイルは、半角英数大文字でファイル名8文字以内、拡張子3文字以内とだけ定めている。その規定を満たせば自由にファイル名を付けることができる。

 栃木県では、工事履歴報告書と段階確認書、台帳類について、それぞれの命名規則に従ってファイル名を付けるように指定している。電子納品支援ソフトによっては、使用者がファイル名の命名規則を設定できる製品もあるが、大抵は設定できる範囲に制約がある。支援ソフトが対応していない場合は手作業でファイル名を変換するしかないので要注意だ。

 作成した電子納品データのチェックについては、ほとんどの自治体の場合、国のチェックシステムを利用すればよい。ただし、広島県や高知県、鹿児島県などは独自のチェックシステムを配布している。これらの自治体に納品する場合は、独自のチェックシステムで確認することが必須となる。