初出:「日経コンストラクション」2008年4月25日号
* 記事は原則執筆時の情報に基づいています。初出から2年が経過していますが、現在でも電子納品の基礎知識についての情報ニーズが高いことから、ケンプラッツで再掲載します(全12回・隔週木曜掲載予定)


 設計業務などを対象とした国土交通省の「土木設計業務等の電子納品要領」では、報告書ファイルをPDF形式で納品すると規定している。そのほか、測量業務や地質・土質調査業務でも、PDF形式で納品するように指定しているケースがある。一方、「工事完成図書の電子納品要領」にはPDF形式に関する規定がない。ここが、工事と業務で大きく異なる点だ。

 PDFに変換する際には、守らなければならないいくつかの規定がある。単に元ファイルをPDF化するだけではないので注意しよう。PDF形式の報告書ファイルの作成では、次のような規定がある。

 用紙は縦位置のA4判を基本とする。写真や図表は、印刷したときに内容が判別できるように気をつける。解像度が低かったり、圧縮率が高すぎたりすると、細かい文字などが読めなくなるので元ファイルを作る段階から注意が必要だ。

 PDFファイルには、特殊なフォント(書体)が入っていないパソコンでも読めるように、ファイル自体にフォントを埋め込む機能がある。ただし、電子納品の際には、どうしても必要な場合以外は、PDFファイルの中にフォントを埋め込まない。元の報告書ファイルを作成する段階から、特殊なフォントは使わないようにする必要がある。

 納品されたデータを、発注者が自由に再利用できるように、PDFファイルにパスワードは設けない。印刷や変更、再利用の許可などセキュリティーに関する設定も行ってはならない。

 原則として1冊の報告書を一つのファイルとするが、ファイルサイズが大きくなる場合は、1ファイル当たり10MBを目安に分割する。分割は、PDF化の前でも後でもかまわない。報告書ファイルを分割してからPDF化してもいいし、報告書をいったんPDF化してから分割してもいい。

 複数の元ファイルを一つの報告書にまとめる場合は、PDF化してから結合する方がやりやすい。例えば、一つの報告書にワープロソフトのワードや表計算ソフトのエクセルなどで作成したファイルが混在する場合、それぞれのファイルをいったんPDF化してから、全体を結合する。

 PDFファイルの作成で、特に大変なのが“しおり”の設定だ。しおりとは、PDFファイルを開いたときに、左側に表示される階層構造の目次のことだ。そこに表示された章や節のタイトルをクリックすると、右側にそのページが表示される。電子納品する報告書には、しおりを設定することが義務付けられている。構成は、章、節、項の3段階とする。

 しおりを設定するには、元の報告書の構成をきちんとした階層構造にしておかなくてはならない。長い報告書を書き慣れていない人には難しいだろう。