* 記事は原則執筆時の情報に基づいています。初出から2年が経過していますが、現在でも電子納品の基礎知識についての情報ニーズが高いことから、ケンプラッツで再掲載します(全12回・隔週木曜掲載予定)
建設工事の現場では、ほかの職員が作成したデータを確認したり、再利用したりするために、お互いにデータを交換する機会も多いだろう。現在、ほとんどの会社や現場では、LANを構築してパソコン同士を接続し、データを共有している。
LANを介してデータをやり取りするには、自分のパソコンのデータをほかのパソコンから参照できるようにする「共有の設定」が必要だ。
ここで特に重要なのが、セキュリティーの確保である。例えば、金額に関する情報など、一部の職員だけにしか見せられないデータもあるだろう。共有の設定では、LANで公開するフォルダーを指定し、データを参照したり更新したりするための権限を使用者ごとに設定できる。
パソコン単体の場合、アカウントと呼ぶ使用者名とログインパスワードを登録することで、パソコンに保管しているデータの参照を、その使用者だけに制限できる。
しかし、共有の設定を行ったフォルダーへの制限は、これとは異なることに注意しなくてはならない。パソコンの電源が入っていれば、このパソコンのログインパスワードを知らなくても、ほかのパソコンからLAN経由で共有フォルダーのデータを参照できるからだ。
このことを十分に理解して、共有フォルダーに保管するデータの内容とセキュリティーの設定を考えなくてはならない。例えば、通常の作業で現場の職員全員が利用するデータはセキュリティーの設定のない共有フォルダーへ保存し、一部の職員だけに参照を制限する重要なデータはセキュリティーの設定がある共有フォルダーへ保存する。
わかりやすいファイル名を
電子納品の成果品は、工事の進行とともに増えていく。随時、変更が必要なデータを保存するフォルダーとは別に、でき上がった成果品用のフォルダーを作成しておくとよい。
成果品用のフォルダーの中は、電子納品の要領に合わせて、写真フォルダーや図面フォルダー、打ち合わせ簿フォルダーなどのサブフォルダーに分けておくとよい。最後の納品物を作成する作業が楽になる。
ほとんどの電子納品支援ソフトには、電子納品要領に準拠したファイル名やフォルダー名に自動変換する機能がある。電子納品用のファイル名などはアルファベット表記なのでわかりにくい。共有の成果品フォルダーに保存する時点では、内容がわかりやすい名前にしておく方が扱いやすく、ミスも起きにくい。
Vista以降のOSでは文字に注意
2007年1月にマイクロソフトの新しい基本ソフト(OS)ウィンドウズVistaが発売された。VistaではJIS2004という規格に対応し、これまでのウィンドウズで使用していた文字のほかに、新しく扱える文字が追加された(編集部注:2009年10月に発売されたウィンドウズ7もJIS2004に対応している)。
これらの文字の多くは、地名や人名などで使う漢字だ。これらは、ウィンドウズXPなどでは表示できない。
気をつけなくてはならないのは、電子納品のデータはまだJIS2004に対応していないことだ。Vistaで新たに追加された文字を、電子納品のデータの中に含めてはいけない。
地名や人名などを表記する際には十分に注意が必要だ。例えば、東京都葛飾区の場合、正しくは「葛」なのだが、この文字はXP以前のウィンドウズでは表記できないので、通常は「葛」を使っている。これをあえて正しく表記してしまうと、電子納品のデータとしては不備となる。