大成建設は2007年4月にBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の本格的な導入を始め、2009年度には約4割の実プロジェクトでBIMを活用。現在、設計のほか営業、施工の各部門、そして協力会社にもまたがったBIMの展開が実現しました。巨大組織にBIMを根付かせた陰には、部門長のリーダーシップ、丁寧な社内教育、そして部署の枠を越えた情報交換の積み重ねがありました。

営業部門や現場、海外子会社でもBIM導入

 大成建設では2005年、建物の設計・施工一貫体制のワークフローを実施するツールとしてBIMの活用に着目し、検討を始めました。そして2007年4月、当時の設計本部長の指示でBIMの本格的な導入が始まりました。

 「当時、BIM対応の3次元CADを使えるのは5~6人だけでした。約3年経過した現在では、約4割の実プロジェクトにBIMを活用するほどに急速に普及しました」と、大成建設設計本部テクニカルデザイン群統括の中村亮一さんは説明します。

大成建設のBIM普及に取り組む設計本部テクニカルデザイン群統括の中村亮一さん(右)と設計本部テクニカルデザイン群の高取昭浩さん(写真:家入龍太)

 BIMの導入は設計部門だけでなく、物件の受注活動を担当する営業部門や、建物の建設現場、そして協力会社や海外の子会社にまで広がっています。

 例えば、営業部門では見込み顧客に対するプレゼンテーションで、建物の企画内容とともに、BIMについても紹介しています。同社に発注するとBIMという視覚的に分かりやすいツールで業務を進めることを売り物にしているのです。

 建設現場では鉄骨の組み立て手順や施工計画の検討、仕上げについて、職人とのイメージ共有などにBIMを活用しています

 「例えば、マンションの内装工事は、部屋ごとにナチュラル調やオーク調など、仕上げの仕様が違う場合があります。そこで、BIM対応のCADソフトで作成した完成パースを各部屋に張っておくと、職人が理解しやすく、ミスも防げます」と同社設計本部テクニカルデザイン群の高取昭浩さんは説明します。

 また、フィリピンのマカチにある同社の子会社「TASPlan(タスプラン)」では、BIMモデルのデータを使って設計図や施工図を作成しています。「今年4月からはBIMモデルを積算や数量計算にも生かすため、専用のプログラムを開発中です」(高取さん)。

大成建設の本社がある新宿センタービル(左写真中央)とフィリピンにあるTASPlanのオフィス(右)(左写真:家入龍太、右写真:大成建設)