初出:「日経コンストラクション」2008年2月8日号
* 記事は原則執筆時の情報に基づいています。初出から2年が経過していますが、現在でも電子納品の基礎知識についての情報ニーズが高いことから、ケンプラッツで再掲載します(全12回・隔週木曜掲載予定)


 前回は、早い段階で電子納品チェックシステムを利用して、成果品をチェックすることを勧めた。実際に納品データを作成してみることで、作業に必要な時間を見積もれるようになる。作業上の問題点を早期に発見して、改善することもできる。

 工事の現場では、図面や書類をCADやワープロ、表計算などのソフトを使って作成する。これらのデータを1台のパソコンですべて作成することはまずないだろう。

 電子納品に当たっては、複数の担当者の連携がスムーズに進むような体制づくりが必要だ。そのために、まずデータの受け渡し方法を確認しておく。LANで受け渡すのが一般的だが、現場にLANがない場合には記憶媒体に保存してデータをやり取りする。MOを使うような場合には、その読み取り装置が必要になる。

納品データを作成するパソコンには、成果品データの内容をすべて確認できるように、関係する全種類のソフトウエアを組み込んでおくことが望ましい
納品データを作成するパソコンには、成果品データの内容をすべて確認できるように、関係する全種類のソフトウエアを組み込んでおくことが望ましい

「SXFブラウザ」でも可

 納品データをまとめる作業を担うパソコンには、元の図面や書類などを作成したソフトウエアをすべて組み込んでおかなくてはならない。納品データの作成中に、元のデータを開いて確認する必要もあるからだ。

 ただし、CADソフトは高額なので、何本も購入するのは難しいだろう。国土交通省では、SXFデータを閲覧できる「SXFブラウザ」を公開している。図面データの内容を確認するだけならば、これでも十分だ。

SXF形式の図面データを表示するソフト。国土交通省のサイトからダウンロードできる。URLはhttp://www.cals-ed.go.jp/( 資料:国土交通省)
SXF形式の図面データを表示するソフト。国土交通省のサイトからダウンロードできる。URLはhttp://www.cals-ed.go.jp/( 資料:国土交通省)

 各ソフトのバージョンの確認も忘れてはならない。同一のソフトでも新しいバージョンで作成したデータは、古いバージョンのソフトでは開けないことがあるからだ。下請け会社が新しいバージョンのソフトを使っていて、元請け会社がそのデータを開けないといった事態も考えられる。バージョンをなるべく統一しておくことが大切だ。

 ファイルの管理方法もきちんと確認しておこう。ファイルの内容を修正し、新しいファイルを次々に作ってしまうと、どのファイルが最新なのかがわからなくなる恐れがある。

 発注者との事前協議も欠かせない。電子納品を行う場合でも、一部の成果品は紙で提出するケースも多い。データで提出する範囲を、事前 に確認しておこう。

 使うソフトの種類やバージョンを明確にしておくことも重要だ。発注者と受注者が同じソフトを持っているとは限らない。受注者が作成したデータを、発注者が開けないこともある。そのような場合、PDFファイルに変換する作業が必要になる。

国土交通省が公開している事前協議チェックシート。これを使って電子納品の対象範囲などを明確にしておく(資料:国土交通省)
国土交通省が公開している事前協議チェックシート。これを使って電子納品の対象範囲などを明確にしておく(資料:国土交通省)

元データからPDFを作成

 PDFファイルを作成する際の注意点は、原則として元データを作成したソフトからPDFファイルを書き出すようにすることだ。印刷した書類をスキャナーで読み取るのではない。

 スキャナーで読み取ったPDFファイルも、元データから作成したPDFファイルも、拡張子はいずれも「pdf」だ。両者とも同じように見えるが、データの中身は全く異なる。スキャナーで読み取ったPDFファイルは画像データなので、文字が含まれていてもテキストデータとして認識されない。画像としてデータが納品されると、再利用する際の妨げになる。

 例外は、なつ印が必要な書類だ。その場合はスキャナーで読み取る。ただし、なつ印されている書類が、すべて印影入りで提出しなくてはならないとは限らない。どの書類になつ印が必要なのか、事前協議できちんと確認しておきたい。