初出:「日経コンストラクション」2008年1月25日号
* 記事は原則執筆時の情報に基づいています。初出から2年が経過していますが、現在でも電子納品の基礎知識についての情報ニーズが高いことから、ケンプラッツで再掲載します(全12回・隔週木曜掲載予定)


 作成した電子成果品の体裁がきちんと整っているかどうかを、納品する前にチェックすることが肝心だ。各管理ファイルの必須項目に記入漏れがないか、使用禁止文字を使っていないかなど、チェックすべき項目は数多い。これらを自動的にこなしてくれるのが、発注者が用意している電子納品チェックシステムだ。

 このシステムは一般に公開されているので、受注者側が納品前にデータをチェックすることに使える。国土交通省や農林水産省、高速道路会社(NEXCO)などが、それぞれ自らの組織の要領や基準に合っているかどうかを調べるチェックシステムをインターネットで公開している。

 例えば、写真データのファイルサイズや解像度に規定を設けている高速道路会社の場合、そのチェックシステムを使うと解像度などをチェックすることが可能だ。

 確かに、電子納品支援ソフトを使って納品データを作成すれば、登録情報をある程度はチェックできる。それでも、発注元の事務所コードの桁数が合っているかなど、支援ソフトによってはチェックしきれない項目もある。そういった項目の入力ミスを防ぐためにも、チェックシステムによる事前のチェックは不可欠だ。電子納品する際には必ず、納品先の発注者が提供しているチェックシステムを入手しておこう。

国土交通省の電子納品チェックシステムの画面。管理ファイルがすべてあるかどうかをチェック (資料:国土交通省)
国土交通省の電子納品チェックシステムの画面。管理ファイルがすべてあるかどうかをチェック (資料:国土交通省)

途中段階のチェックで手戻り防止

 通常、チェックシステムを使うのは成果品を提出する直前だろう。それ以外に工事の初期段階や中盤でも随時、途中段階の電子成果品を作成して、チェックシステムで検査することを強く勧めたい。その際にすべてのデータがそろっていないことが原因で表示されるエラーメッセージは無視すればよい。

 例えば、各写真データには分類名や写真区分名、工種名などの情報を付加する。写真区分欄に工種名を入れてしまうようなミスが想定できる。成果品をまとめた後でこのようなミスが見つかった場合、それまでに作った全データを修正しなければならなくなる。工事の早い段階でミスに気づけば、納品直前に大慌てする事態は避けられる。

 チェックシステムによるチェックが済み、最終的な成果品のデータがまとまったら、セキュリティーソフトを使って、コンピューターウイルスに感染していないかどうかをチェックすることも必須だ。使うセキュリティーソフトについての規定はないので、普段使っているソフトで構わない。ただし、ウイルス定義ファイルは必ず最新のものに更新しておく必要がある。

ビューワーで成果品の見え方確認

 発注者が、納品された電子成果品を検査する際には通常、ビューワーと呼ぶソフトウエアを使う。ビューワーには、発注者が用意したもののほか、支援ソフトを販売しているメーカーが提供しているものもある。

 ビューワーを使うと、工事管理ファイルや各成果品の管理ファイルを確認しやすいように一覧形式で表示できる。写真など大量にある納品データを、写真のタイトルや工種などの情報から検索することも可能だ。

 さらに、ビューワーから、表計算ソフトやCADソフトなど成果品の元データを作成したソフトウエアを立ち上げて、データの内容を確認することもできる。

 画像は新潟県が用意したビューワー「工事監理官簡易検査ビューア」の画面だ。新潟県発注の一部の工事では、このビューワーを使って検査を実施している。

新潟県が使っているビューワーの画面。工事写真など、納品されたデータを見やすく表示する(資料:NEC)
新潟県が使っているビューワーの画面。工事写真など、納品されたデータを見やすく表示する(資料:NEC)

 発注者が用意したビューワーは、公開されていないケースが多い。しかし、もし入手可能な場合には、納品する電子成果品がどのように確認されるのかを事前に見ておきたい。

 ビューワーによる納品データの表示方法は、自分が使っている支援ソフトによるデータの表示方法と大きく異なることも多い。例えば、写真の並ぶ順番が異なっていることもある。ビューワーの操作方法に慣れておけば、検査をスムーズに進めることができる。

電子納品チェックシステムの入手先