工事情報共有システムを運用する際の留意事項

 以上見てきたように、生産プロセスの業務改革の一環として、発注者と受注者との間での工事情報共有システムの利活用が普及しつつあります。公共工事と民間工事では、それぞれシステム適用の背景や目的が若干異なりますが、システム化の目的や共有する情報の範囲等を事前に確認して運用することでシステム導入の効果が得られると考えられます(図4)

図4●工事情報共有システム運用の事前確認事項

 この図4に示した内容以外に留意すべき点としては、利用ルールの事前検討とセキュリティー対策も重要です。ポイントは以下の通りです。

表3●情報共有システムの利用ルールとセキュリティ対策
1.利用ルールの事前検討
(1)システム運用者の設定
 システム環境設定(利用者の登録等)、問い合わせへの回答機能など
(2)電子ファイル共有のためのフォルダー管理
 フォルダー構成、フォルダー追加変更の権利付与、フォルダーのネーミングなど
(3)電子ファイル共有のためのファイル管理
 共有するファイル形式、ファイルのネーミングのルール化など
2.セキュリティー対策
(1)アクセス権限の設定と管理
 データの登録、変更、削除、閲覧等の権限の付与方法
 アクセスログ記録の機能
(2)ユーザIDとパスワードに関する利用者への教育
 パスワードを他人に教えない、簡単なパスワードにしない、パスワードをパソコンなどに貼らないなど
(3)ウイルス対策ソフトの導入
 サーバー(必要により)およびパソコンに最新のウイルス対策ソフトを導入する

 今後、工事情報共有システムの適用はさらに拡大すると思われます。工事情報共有システムを生産性向上につなげるためには、利用者の情報リテラシーの向上や自社システムとのデータ連携なども課題となりますので、建設関連各社の積極的な取り組みが求められると思われます。

執筆:東建IT研究会
「建設会社の利益に結びつくITの研究及び支援」を目的に、東京建設業協会内に2004年5月14日に設立した研究会。月1回の定例会議で、講習会の企画・開催、意見交換会、調査・研究、教育プログラム策定などの活動を行っている。
▼東建IT研究会のウェブサイト
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