(2)民間工事の工事情報共有システム――ASPも現実的な選択肢に

 民間工事における関係者(発注者、設計者、施工者)間での工事情報共有は、電話、ファックスに加えて電子メールも活発に利用されてきましたが、電子メールには前掲の表2のような弱点があります。

 より高度な工事情報共有を進めるには、専用の情報システムの活用が不可欠となりますが、。最近では現実的に利用可能な建設業向けのASPサービスもいくつか出てきています。今回はオートデスクの「Autodesk Buzzsaw」を例に、こうした工事情報共有ツールの機能を説明します。

1.簡単操作
 送受信したいファイル、フォルダーをドラッグ&ドロップするだけの簡単操作です。また、ファイルが自動的に圧縮されて送受信されるので、自分でファイルを圧縮して送受信する面倒な操作が不要となります。

2.関係者への通知
 システムに登録したファイルやフォルダの登録と同時に関係者にメールで通知することができます。この通知を行うとメールに自動的にアドレスが記入され、そのアドレスをクリックすることで登録したファイルにアクセスすることができます。

図3-1●簡単操作
図3-2●関係者への通知方法

3.ファイルのバージョン管理
 誰がいつファイルを修正したのかについて、システムが自動的に履歴管理します。同じファイル名で上書きしてもきちんと元のファイルを管理していますので、手を加える前のファイルを再度使用することも可能です。

4.ファイルのチェックと更新
  誰がいつファイルをチェックしたのかについて、システムが自動的に履歴管理します。使用中のファイルをロックしておけば他の人が更新や削除をできなくなるので、図面に朱書きやコメントをして確認結果を伝達することが可能となります。

図3-3●ファイルのバージョン管理
図3-4●ファイルのチェック

5.ディスカッション
 共有するファイルについて関係者間でコミュニケーションすることができます。また、やり取りの履歴も管理することができます。

6.ユーザ管理、アクセス権管理、容量管理
 利用者の登録や管理が容易です。また、細かい設定のアクセス制御(8種類)や、デイスク容量の使用状況の監視も容易にできます。

図3-5●ディスカッション
図3-6●アクセス権管理、容量管理

 
 これら機能のほか、「Autodesk Buzzsaw」にはワークフローや外部参照ファイルの機能などもあます。

(3)協力会社との工事情報共有システム――元請け会社の独自システム利用が多い

 元請け会社と協力会社との間での工事情報共有は、各元請け会社ごとの独自システムを使うケースが多くなっています。主な機能としては、元請け会社よりの施工計画、工程、施工図等の情報開示や協力会社から元請け会社への書類の提出が挙げられます。また、各協力会社の工事予定および実績などを共有して工事調整や工事日報を作成するシステムもあります。

 いずれも元請け各社の独自の機能を搭載したシステムですので、各社の業務改革の視点によりそのシステム機能も異なったものになります。

 元請け会社は、協力会社とのコミュニケーション用のポータルを構築し、その一部の機能(協力会社からの書類提出受付など)でASPを採用することがあります(元請けの自社システムに工事書類機能を搭載している場合もあります)。工事書類の作成と提出にかかわるASPサービスの例としては、「書類の達人」(ラインテック)、「建設サイト」(三菱商事)などがあります。