工事情報共有のパターン――公共工事と民間工事

 工事情報の共有については、発注者側から使用するシステムが指示される場合があります。その場合、公共工事における情報共有システムと民間工事のおける情報共有システムとではその利用目的やシステム内容が異なることがあります。また、元請け会社とその協力会社との情報共有システムも各元請け会社主導によってシステム導入が行われつつあります(図1)

図2●工事情報共有システムのパターン

(1)公共工事における情報共有
 公共工事では、設計書(仕様書)の特記により工事情報共有システムの利用を指示されるケースがあります。システム環境は発注者側のサーバーを利用する場合と外部のASPサービスを利用する場合があります。また情報共有システムは発注者の仕様に沿ったシステムを利用し、発注者と受注者間で主に工事書類や一般の電子ファイルにかかわる情報共有を行います。

(2)民間工事における情報共有
 民間工事の工事情報共有におけるシステムの利用は、発注者の要請による場合と、受注者側からの提案による場合があります。以前は専用のサーバーを受注者側に設置して情報共有を行うこともありましたが、最近では情報共有システムをASPで利用するケースが多くなっています。ASPの場合、情報を共有するサーバーはASP事業者がデータセンターに設置・管理しているものを利用します。共有する情報の内容としては、工事進捗の報告、書類の提出、図面・承認の確認などが主となっています。

(3)元請け会社と協力会社における情報共有
 元請け会社が、その工事に参画する協力会社と工事情報の共有を行うケースが増えつつあります。元請け会社のサーバー環境またはASPによりシステムを利用することになりますが、その内容は工事進捗にかかわる情報共有や協力会社から元請け会社への工事書類の提出が主となっています。

 次に、この3つの情報共有について、さらに詳しく見て行きます。

(1)公共工事の工事情報共有システム――国交省などで取り組みが進展

 公共工事の工事情報共有システムは、国土交通省および一部の地方自治体でそれぞれ独自のシステム仕様を定めて導入の取り組みを進めています。現在の国土交通省における工事情報共有は「工事施工中における受発注者間の情報共有システム機能要件 平成20年12月版(Rev.2.0)」によりますが、この機能要件については「要件編」と「解説編」が以下のウェブサイトにて公開されています。

▼国土交通省国土技術政策総合研究所「CALS/EC 電子納品に関する要領・基準」
http://www.cals-ed.go.jp/index_denshi_kyouyuu.htm

 国土交通省では、同省の工事でASP事業者が提供する工事情報共有システムを適用することもあり、同サイトで機能要件に対応するシステムを提供するASP事業者の一覧(「情報共有システム提供者における機能要件の対応状況」)も公開しています。

 国土交通省ではASPによる工事情報共有システムを活用して、平成21年度に各地方整備局ごとに50から100件程度(全体で1000件)のモデル工事でのシステム試行を行い、受発注者間のコミュニケーションを円滑化して生産性向上へつなげる計画です。工事受注会社は、今後その対応が必要となってくるでしょう。