昨今のIT(情報技術)の進展、特に情報通信ネットワークの性能アップとコストダウンにより、大容量の電子データ交換が手軽に行えるようになってきました。大容量の情報を扱う建設生産活動の現場でも、ITを活用できる場面が増えてきたといえます。

 特に建設の施工段階では設計図、施工図、仕様書、工事写真等々の大容量の情報を大量に取り扱います。しかも、施主、設計者、施工会社社員、協力会社社員など多くのメンバーが工事にかかわることを考えると、ITを活用した情報共有は、時間、費用、品質について大変効果的だといえるでしょう(表1)

表1●ITを活用した情報共有の効果
【時間の短縮】
・図面データ等の送付時間の短縮
・タイムリーな関連データ交換による会議時間の削減
【費用の削減】
・図面やデータを格納した電子媒体を配送するための手間と送料の削減
【品質向上】
・最新の正しいデータを関係者間で共有することによる手戻りや手直しの削減

工事情報共有の目的とその実施方法について

 ITを活用した工事情報の共有には、電子メールでデータを送受信する方法とサーバーに蓄積して共有する方法があります。サーバーは自前で設置する場合と、ASP(Application Service Provider:ネットを介して業務用ソフトウエアを月額料金などで提供するサービス)などの外部サービスを利用する場合があります(図1)

図1●工事情報共有の方法

1)電子メールによる工事情報の共有
 電子メールは、既に皆さんは日常の業務で活用していると思います。ただし、電子メールはあくまでも個人レベルでの情報交換にすぎず、情報共有ツールとして見ると以下のような弱点があります。

表2●情報共有ツールとして見た場合の電子メールの弱点
1.ファイルの制約
・通信速度が遅く写真や図面データを送付すると時間がかかる
・受信した電子ファイルを開くときに、参照用のソフトウエアが必要になる
2.メール容量の制約
・ファイルを送受信するときに、容量に制限がある
3.ファイルの整理が煩雑
・受信メールの仕訳整理に手間がかかる
4.情報の共有化が不十分
・関係者と情報共有する時に、その都度メール送信相手を選ぶなどなど手間がかかる
・送り合う電子ファイルのバージョン管理が難しい

2)共有サーバーによる工事情報の共有
 工事にかかわる情報を共有するために専用サーバーを設置する方法です。目的が限定されるため工事の特定などを考慮した情報共有が可能となります。ただし、工事関係者が所属する各組織からのアクセスとなるため、セキュリティーの確保などの技術的な課題や環境構築にかかわる費用負担の問題があります。さらにサーバー内のデータバックアップなどサーバーの管理・運用業務も発生します。

3)外部サービスによる工事情報の共有
 工事情報共有システムを自前で用意することなく、ASPによるサービスを使って情報共有することも可能です。情報共有の目的にあったASPサービスを選定・契約し、工事関係者の氏名やメールアドレスを登録することで利用できます。インターネット環境があればどこからでも利用することができ、データのバックアップやサーバー側のウイルス対策などはASP事業者側で行うため容易に利用を始めることができます。ただし、費用負担や工事終了後のデータの取り扱いなどは、関係者間で事前に取り決めておく必要があります。