建築、土木の設計業務では3次元CADやビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)など、3次元の“仮想空間”で建物や構造物を設計する手法が急速に普及しつつあります。

逆に、“現実空間”の中に実際に建っている建物や土木構造物、遺跡などの3次元の形状をそっくりそのままコンピューターに写し取ってくる技術も最近、急速に注目を集めています。

その技術の中核を担うのが、「3次元スキャナー」というマシンです。スキャナーといっても、パソコンの横に置いてあるようなものではなく、トータルステーションなどと同じように数十メートルから数百メートル先にある物体を計測する測量機器の一種で、


ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、


毎秒数十万点の3D座標


の位置を、高精度に測定できるものなのです。


3次元スキャナーを活用した様々なソフト、ハード、技術の最先端を紹介するイベントが「3次元計測フォーラム(SPARJ)」というもので、先週の木、金の2日間にわたって、神奈川県川崎市で開催されました。

設計者の姿も多く見られた「3次元計測フォーラム(SPARJ)」の会場(写真:日経BP社)

3Dスキャナーで測定した工場内で設備機器を交換するために移動させるとどの部材に接触するかがすぐわかる3D干渉チェック。“現実”と“仮装”の3Dデータがコラボしていた。東芝プラントシステムのブースにて(写真:日経BP社)

1~2mといった短距離で対象物の細かい形状を記録する小型3Dスキャナー。遺跡調査を素早くこなしたい建設現場からのニーズも多いそうだ。オーピーティーのブースにて(写真:日経BP社)

講演会場では測量実務のほか、プラント、建築、土木の設計に関する講演も多く行われた。写真はIAI日本代表理事の山下純一さんが48時間で建物を設計するイベント「Build Live Tokyo 2009」について講演しているところ(写真:日経BP社)



スパーポイントリサーチの河村幸二さんが手作り感覚で毎年、開催しているこのユニークなイベントは今回で5年目となりますが、年々、来場者が増えており、今回は以前よりも多くの来場者がつめかけたようで、セミナー会場、展示会場とも活気に満ちていました。

既存の建物などの形状を3次元データとして写し取り、3次元CADやBIMのシステムと一緒に設計や施工の検討が行えることから、建築、土木の設計者の多く来場していたようです。


いわば、


仮想と現実のコラボ


レーションを実現するツールと言ってもよさそうです。


これからの建設業界では、新設は減り、従来の建物や構造物の維持管理の仕事が増えていくことが予想されます。その際、3次元スキャナーは設計の元データとなる3次元出来形モデルを手早く用意するために、ますますニーズが高まってくるでしょう。

あまり元気のない建設業界ですが、このイベントの盛況ぶりは、同じ業界の中にも確実に成長している分野があることを示しているようでした。