今年2月25日から27日にかけて行われたインターネット上の設計コンペ「Build Live Tokyo2009」は、48時間という短時間で東京・臨海部の用地に「環境技術研究センター」という架空の施設を設計するものでした。

その驚異的な設計スピードから、“建築界のF1レース”とも言われるこのコンペに参加したチーム「the BOMb」の司令長官を務めた伊藤久晴さんが、4月17日、東京で開催されたセミナーで同チームの設計プロセスを紹介しました。

会場には、ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、


約100人の受講者


がぎっしりと詰めかけ、熱心に耳を傾けていました。


同チームは40人のメンバーからなり、参加チーム中最大規模です。全国各地に散らばるメンバーが効率的にコラボレーションできるように、マスタープラン作成、意匠設計、統合BIMモデル作成、解析・プレゼンテーションの各工程を12時間ずつに分けて行う工程を予め計画していました。

チーム「the BOMb」の報告を聞きに集まった約100人の受講者

講演する伊藤久晴氏

「BIM3.0はもう見えてきた!」と、日本BIM力が世界に追いついてきたことを報告するスライド

「今後、まちづくりや環境デザインでは、人物が主役になるだろう」と語る大阪大学の福田知弘准教授



また、3次元CADや各種解析ソフト間のデータ交換についても、昨年、いろいろなソフトを使って検証し、データ交換を行う方法を予め決めておいたとのこと。

こうした地道な取り組みがあってこそ、普通なら50日はかかるという内容の設計を、たった48時間で行えたのだ、伊藤さんは説明しました。

BIMの進化レベルを表す言葉として、建物の3次元モデリングや図面作成を行う「BIM1.0」、モデルを使って解析を行う「BIM2.0」、そしてBIMによる業界全体のワークフロー改革を行う「BIM3.0」という言葉を伊藤さんが会長を務める「Revitユーザー会」では使っていますが、今回、同チーム内では、


BIM3.0は半分達成


されたとのことです。


つまり、計画から実施設計に至る上流工程はほぼ、BIMによる異企業間のコラボレーション作業が実現したという意味です。あとは施工や維持管理まで、BIMモデルが受け継がれていけば、BIM3.0は実現する、というわけですね。

ちょっと前まで、日本の建築業界は海外に比べて3次元CADの活用が遅れているのが不思議でした。しかし、いざ、本気になると海外の新技術を導入し、日本流に使いこなすという日本人の強みが発揮されることが、3Dの分野でも実証されました。

また、続いて講演した大阪大学の福田知弘准教授は、都市の再開発や環境デザインでは、今後、人物が添景から主役になってくるのではないかとの予測を明らかにしました。BIMのシミュレーションでも、使い勝手や感覚といった人間の感性を生かした解析が今後、増えてくるかもしれませんね。