蒸気機関車が日本中を走っていた時代には、「タブレット」という大きな輪のついた革のケースを機関士が駅員と受け渡ししている光景がよく見られました。
これまでの鉄道では、列車の衝突事故を防ぐため、線路を区間に区切って、その区間内に別の列車がいる場合は、信号が赤になり、進入できないように制御していたのです。
現在はタブレットは影をひそめ、軌道回路や地上信号機、ATSなどの最新機器を使って信号などを制御していますが、地上設備にたよる点はここ100年間ほど変わりありません。
ところが、東北地方を走る仙石線で来年度、「100年来の鉄道革命」ともいうべき出来事が起ころうとしています。
ナ、ナ、ナ、ナ、ナント、
無線で列車を制御
する「ATACS(Advanced Train Administration and Communications System)」という画期的なシステムが導入されるのです。
このシステムは、列車自身が自分の位置を算出し、そのデータを無線で地上の制御装置に送信。
地上装置は時々刻々と変わる
全列車の位置を把握
して、各列車が進める位置を送信します。
すると、運転席に設けられた信号に「進め」、「止まれ」などの指示が表示されるというわけです。
このシステムを使うと、地上設備は非常にシンプルになるほか、従来の「閉そく方式」でなく、「間隔制御」を行えるようになるため、無駄な待ち時間が減るなどのメリットがあります。
現代でも、以前からの鉄道システムなどは、ITがない時代の基本的な仕組みを引きずっていることがあるのですね。「固定された地上設備」を使っているシステムがあれば、IT化でシンプルにできないか一度、考えてみてもよさそうです。