3次元の画像を3次元で見るモニターも登場
模型作成を自動化する3Dプリンターやソフト


3次元CADで設計し、建物などの内部をウオークスルーやCG、アニメーションで表示しても、平面のモニター上に表示する段階では2次元のイメージを見ているに過ぎません。そのため、遠近感や奥行き感などがあまりリアルに感じられないという限界もあります。

こうした限界を打ち破る出力装置がいろいろと登場しつつあります。レッドローバージャパンは、立体的な奥行きを感じながら画面を見られる「True3Diモニター」を発売しています。専用のメガネをかけて画面をのぞくと、本当に遠くのものは遠くに、近くのものは近くに、リアルな感じで見ることができます。 2枚の液晶パネルを使っているため、画像が鮮明で解像度も高く、視野が広いのが特徴です。

最近は衛星放送でも一部で3D立体放送が行われたり、ゲーム機用や携帯電話用などでも立体的に見える液晶が開発されたりしています。建築、土木分野でも近い将来は3次元モニターの使用が当たり前になってくるのかもしれませんね。

フォーラムエイトの4Dシミュレーションソフト「UC/win-Road」で「True3Diモニター」を使った例。メガネをかけて使用する(左)と立体的な映像が見られる。メガネなしだと左右の眼用にずれた画像となる(右)


BIMの普及とともに、建築設計の分野で急速に注目を集め始めているのが、3Dプリンターです。立体的な形をした建築模型などを自動的に作ってくれる機械のことですのでプリンターといってもイメージが伝わりにくいかもしれません。模型の材料にプラスチックや石こうなどのほか、薄い紙や塩ビシートを使うものまで、いろいろなタイプの機械が登場しています。

まず、プラスチック樹脂を原料にして模型をつくる3Dプリンターを各種、取りそろえている会社に丸紅情報システムズがあります。エントリー機の「Dimension786」は、プラスチック樹脂の細い棒を溶かして、ノズルから0.2~0.3mm程度の厚さで模型の断面形状に合わせて少しずつ、積み上げていき、最終的に立体の模型を作るものです。造形サイズはW203mm×D203mm×H305mmの大きさで、アーチのように下が空洞になった模型も「サポート材」という撤去可能な材料で支えながら造形することができます。サポート材は手でちぎって外すタイプと、溶液で溶かすタイプがあります。

千葉市美浜区に本社を置くファソテックも樹脂を原料にした3Dプリンターを各種、扱っています。エントリー機としての位置付けの「Alaris30」は、小型で机の上にも置けそうな3Dプリンターです。積層厚は28μmと非常に小さく、解像度も600 x 600dpiと高いので、微細な部分まで造形できるのが特徴です。サポート材は水で溶かして撤去するのが特徴です。

また、Zコーポレーションでは、石こうなどの粉末を固めて模型を作るタイプの様々な3Dプリンターを販売しています。この機種の特徴は、カラープリンターのように模型に自動的に色付けできることです。石こうの粉末の上に固結材とインクをごく薄い厚さで噴射しながら、模型の断面形状に従って少しずつ上方に移動し、最終的に色つきの模型を作るような仕組みになっています。

模型の造形が終了したときは、粉の中に模型全体が埋まった状態になっていますので、後から掘り出して、固まっていない石こうを取り除き、ワックスをしみこませてしっかり固めると完成です。

3Dプリンター「Dimension786」(左)と作成した建築模型(右)(左の写真:丸紅情報システムズ)
「Alaris30」(左)と作成した模型の例(右)(2点の写真:ファソテック) 
粉体を固めて模型を作るタイプの「ZPrinter650」(左)と同種のマシンで作成した色つきの建築模型(右)(2点の画像:Zコーポレーション)


愛知県吉良町に本社を置くキラ・コーポレーションでは、薄い紙やプラスチックシートを積み重ねて模型を作る珍しいタイプの3Dプリンターを発売しています。

まず、紙を材料にして模型を作るのは「KATANA」という製品です。プラスチックや石こうで模型の断面を作っていく代わりに、紙に断面の形状に沿って切れ目を入れ、それを順次、積み重ねていくことで立体を作っていきます。ちょうど、立体地図を作るときに厚紙を等高線の形に沿って切り出し、それを積み重ねていくのと同じような原理です。

そのため、地形模型などは非常に素晴らしいものを作ることができます。弱点は中空になった部分の紙を取り出しにくいことですので、建物などを造形するときはいくつかに分解して作り、後で組み立てるなどの方法をとる必要があります。造形できる最大寸法は、180mm×280mm×150mmの大きさです。

これと同じ原理で、材料を透明なプラスチックシート(PVC)にしたものが「SD300」という3Dプリンターです。厚さ0.168mmのシートを溶融接着しながら積層して模型を作るため、透明感のある模型を作ることができます。

紙を積層する「KATANA」(左)と模型の作例(右)
「SD300」(左)と模型の作例(右)(以上4点の画像:キラ・コーポレーション)


模型の強みは、手にとって感触を確かめながら、複数の人が好きな角度から同時に見ることができるところです。そこで交わされる会話の中で、新しいアイデアや理解が生まれたりします。長崎市に本社を置くザ・システムでは、住宅のぺーパー模型が作れる「模型の達人」ソフトを発売しています。

プランデータを自動的に模型のパーツに変換して展開図を作り、ケント紙にカラー出力することで50分の1スケールの模型材料ができあがります。あとはカッターで切り抜き、両面テープやボンドで張り合わせることによって3~5時間程度で住宅の模型が完成します。設計した図面を模型キットにしたり、完成品としてお施主さんに持参したりすると、喜んでもらえそうですね。差の出る営業ツールとしても使えそうです。

今回、紹介した3次元関連のハード製品などは市販されているものの一部で、他にも興味深い製品がいろいろとあります。海外製品などの場合は輸入販売している会社が複数存在する場合もありますが、この記事に登場した会社だけを推奨するものではありません。

「模型の達人」で作成した展開図(左)と模型の完成予想図(右)(2点の画像:ザ・システム)

(「建設3次元まつり2009」の大河ストーリーは原則、毎週水曜日に更新します)