マウスのクリックを半減させる入力装置
3次元モデルを効率的に扱う


ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)や3次元CADを用いた設計業務では、従来の2次元CADで使っていたマウスやプリンターなどの入出力機器では、機能面で満足がいかなくなる場合もあります。また、データ量の多い3次元CADをストレスなく使いこなすためには、使用するハードも従来のパソコンから、機能の拡張性が高いワークステーションが望ましい場合もあります。今回は、BIMや3次元CADでの設計を効率的に行えるようにするための入出力機器にはどんな製品が発売されているのかを見てみましょう。

まず、入力機器ですが、2次元CADでの設計作業では、基本的にXYの2方向の動きが基本になりますので、従来のマウスでもそれほど問題はありませんでした。ところが、BIMや3次元CADでの設計作業では、建物や構造物の3次元モデルをくるくると回したり、上空から見たり、周囲を動き回ったりしながらの作業が多くなりますので、コンピューターの仮想空間を自由自在に動き回れる入力装置が便利です。

3次元CADやCGでの作業に便利なように作られたのが、3Dコネクションの「SpaceNavigator」や「SpacePilot」などの入力装置です。これらは左手で操作し、通常のマウスと併用することにより、モデルの方向変更やズーム、ローテーションをそれぞれ独立した操作で直感的に行えるようになります。複雑な操作を簡単にかつ同時に行うことができるものです。

同社のホームページによると、これらの入力装置を活用することでマウスのクリックが 50%減少し、生産性が 30%向上するとのことです。

3次元モデルを扱いやすくする「SpaceNavigator」(左)と「SpacePilot」(右)。通常のマウスと併用する(上下3点の画像:3Dコネクション)
一つのツマミで複数の動作を同時に行える


まるで空中にある“仮想粘土”を伸ばしたり、引っぱったり、穴を開けたりするような感覚で3次元の物体をデザインできる入力装置が、3次元力覚入出力デバイス「PHANTOM(ファントム)」という製品です。スリーディーが販売しています。

この入力装置の特徴は、人間の手や指に装置からの「反力」を感じることです。まるで、モニターに映った3次元物体と同じ形状の透明な物体が、目の前に浮かんでいるかのような感覚です。指先は物体の“表面”に沿うような動きを行い、穴が空いているときは、穴が空いている方向にはアームが動きますが、その直角方向には拘束されます。こうして、仮想の物体からの反力を感じながら、コンピューター上で感覚的な造形を行っていくことができるのです。

製品の種類により、3~6自由度の位置センサーを内蔵しており、モーターによるトルク制御で3~6自由度の「フォースフィードバック」がかかるような仕組みになっています。

3次元設計が進化してくると、不規則な自由曲面を使った意匠性の高い建物の設計や、オリジナルのドアノブやオブジェなどの製作にも挑戦してみたくなりますが、そんなときに便利な入力装置でしょう。

空中に物体があるように感じながら造形できる入力装置「PHANTOM」(画像:スリーディー) 引っぱったり、穴を開けたりしてモデルを作っていく。豊橋技術科学大学の「CAD/CAMラボ」にて


実際にある建物や部材の3次元形状を測定し、そのままの3次元モデルとしてコンピューターに取り込んでしまいたいときに便利なのが3Dスキャナーです。これまでは、トータルステーションのように大型のマシンが中心でしたが、手持ち式の小型のマシンも登場しました。Zコーポレーションが販売している「ZScanner 700」という製品です。

重さ1.3kgの装置は片手で簡単に持て、測定したい物体の周囲を手持ちでぐるりと動かすことにより、毎秒1万8000点の物体上の点の3次元座標値を取得します。さらにカラーによるテクスチャー情報も取得しますので、物体の形状だけでなく色もコンピューターのなかに“3次元コピー”をすることができるのです。

また、建設分野で使われる3Dスキャナーは、以前は海外製品ばかりでしたが、国産の製品もついに昨年8月、トプコンから「GLS-1000」という製品が発売されました。

Zコーポレーションの手持ち式3Dスキャナー「ZScanner 700」(左)と使用例(右)(2点の画像:Zコーポレーション)
トプコンから発売された3Dスキャナー「GLS-1000」(画像:トプコンのプレスリリースより)