CGや動画を使って構造や施工手順を表現
言葉の壁をBIMの可視化力で補う



前田建設工業の関連会社であるJMは、2008年5月、中国のデベロッパー、万科のマンション建設プロジェクトでBIMを活用した設計、施工をサポートしました。ここで大きな効果を発揮したのはBIM対応の3次元CAD。建物の3次元モデルで完成イメージを表現したり、プレキャスト部材や鉄筋を組むときの複雑な施工手順を動画で現地の技術者や作業員などに説明したりしたのです。

中国でプレキャスト工法で施工されたマンションのCGイメージ(以下の写真、画像:JM)
基礎から屋上まで、3次元モデルで設計されているため、複雑な構造も一目瞭然でわかる。JM作成の画像をアニメーション的にまとめたもの 地上部分の施工手順


3階建てのマンションの施工にはプレキャスト工法を採用し、工場で製作された部材を現場に搬入し、組み立てる方法がとられました。現場でのコンクリート打設は梁と柱の接合部など、一部だけでした。

当然、施工前に建物の躯体と構造、設備の干渉などをチェックしておかなければなりません。現場で鉄筋を組み、型枠に生コンクリートを打設する従来工法と違って、プレキャストコンクリート部材を使う方法は少しのミスが大きなトラブルを生みがちです。

「梁と柱の接合部は鉄筋が縦横に複雑に入り組み、組み立て手順を間違えると施工できなくなります。そこで鉄筋の組み立て手順を4Dのシミュレーション動画として作成し、現場の作業員などへの説明に使いました」と、JM代表取締役の大竹弘孝さんは説明します。

意匠、設備、構造の設計には同じシリーズの3次元CADを用いて設計し、それぞれの3次元モデルをビューワーソフトで統合しました。ソフト上でこれらのモデルデータを統合した「3次元総合図」を作成し、部材の干渉チェックなどを行いました。

意匠設計用3次元CADの画面 3次元モデルと連動する平面図
構造の3次元モデル 設備の3次元モデル
3次元CAD上で構造と設備を合体させて表示したもの
梁と柱の接合方法を4Dで表現したもの。手順を間違えやすい複雑な構造も一目で理解できる